第31話 ピコ半

ギュイィーン

ゴルゴダの影からぬっと黒い棒が飛び出し

金属同士をぶつけ合った様な凄まじい音を響かせた


「z、ジジッzz」


え?何言ってるかわかんないよ・・


『小娘死にたいのか』

『這ってでもいいから動け』


恐る恐る振り返ると白く綺麗な刺繍のローブ

フードを被っているから顔は見えないけど

黒い髭が見えたような


ありがとうおじいちゃん

心の中で感謝しつつ

ローブ交換してくれないかなー

などど能天気な事を考えていた


「死んでも生き返るってロンドさんが」


『いいから動け』

『そいつは今どこにいる』

『方法はきいたのか?』


うわー怒ってる

そろっとその場を離れ改めて向き直す


カン カン カン

ローブの人がポールアクスの柄の部分に

3連撃を叩き込むと

ポールアクスが跳ね上がった


黒い牛の人がにやりと笑ったような気がした

「爆閻のインパクト」


黒い炎が渦を巻いて迫ってきた

私は無意識のままルーンを突き出した

ルーンには黒い魔石が嵌っていた

暗黒なんとかの石・・シュウン

何もおきず渦はその魔石に吸収された


ラーニング 冥府の炎


ゴルゴダはローブの人を探した

黒い牛の背後に銀の片手杖を持って立っていた

それはまるで銀色の蛇が巻きついたような装飾と

蛇腹状の丸い突起が杖の先端に横向きに付いており

それはまるでその神聖さとは比較にならないチープさで


「ピコピコハンマーみたいね」


思わず口に出してしまっても仕方ないと


目にも留まらぬ高速回転で


ピコピコピコピコ

と音を立てて当たる様は

これが戦闘とは信じられないのだが

1ピコあたり1回の癒しの光りが出ているところを鑑みるにヒーリングワンドのようなものだと思われた

牛の人が棒立ちしているので

バックルの閻の文字をルーンで突くと

砂のように牛の人が崩れ去った


黒く閻の文字が刻まれたコインと

黒く大きな魔石が


コインを拾い上げると

ピコーン 閻魔の記憶ダンジョンの資格を獲得しました


はぁ?また意味不明な


魔石採って帰りましょう

魔石に触れると

バチィィ

痛った・・


黒い魔石の表面が青く光ると

黒い霧が暗黒母の亡骸に引き寄せられ

覆い淡く青白い光りに包まれると


ズ・ズ・ズズ

何かが引きずられるような音と

白と黒の縞模様の何かが

黒い灰と魔石に触れた


その一瞬の事は今でも理解できないのだけど

 丑寅

 冥闇

 悪魔

 憑依


こんな感じの文字が

魔方陣に見えたと思ったら


漆黒の悪魔が居ました

黒く捻じ曲がった二本の角

細く引き締まった漆黒の体

信じられないくらいの柄の長い斧

しましまのパンツ


あっ今度こそ死んだって思ったら

ルーンブレイドが持ち手の上の装飾から

黒い翼が出て刀身が限界まで大きく開き

私より大きな漆黒の悪魔をバクンと一飲みしていた

そのまま黒い鳥がどこかにすうーと消えていった

見渡すと何も無かった

何も

誰も

争った形跡まで


「今見たのは夢?」


誰からも返事は無かった

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