第15話 Orphan黒き子犬
時は動き出した
確かに時は・・・
時間は動き出しても
形は違えど箱の中
空間の支配権はアカシアが握っていた
『何も動き出さないんですのね』
いっそすべてを壊して
何も無かったことにする・・なんて・・
しかし自我というものに目覚めたアカシアは
理を外れてみたい
いっそ自分が代わりに超越者に
神格化して
いやむしろ受肉して
もんもんと
メトロノームのように
気持ちが揺れていた
スペアは作れるかしら
魔法媒体か
触媒に
爪か
指でも
痛みが無い髪がいい
頭の下に高枕を差し入れ
首の後ろから刃物を入れて
1回
2回
切っても
切っても
腰の辺りまでスルスルと髪が伸びた
6回目
若干色が薄くなる
そこで止めその束を一房残し
残りは布で束ね箱に入れ
鍵をかけ
収納にしまう
さてこっちはもういいとして
生意気な子犬
どうしてくれましょうか・・・
黒い子犬
どことなくツキノワグマを思わせる
白銀の三日月
むしろ涎掛けのよう
とても襲ってきた同一固体とは思えない愛らしさ
一瞬ルナールなどと付けようとして
槍が降ろうともなんたらかんたらと
自分の出自を思い出してはぞっとして
消えてなくなる前に話だけは聞いてやろうと
子犬の前に立つとしゃがむ
おもむろに陶器のようになった頭をなでる
アカシアの左腕の下のリボンを解くと
子犬の首に結びつけた
ゴルゴダの頭髪の一房で組紐を作ると
左手に魔力を這わせると壷が手元に現れ
蓋を開け組紐の先を浸し
頭に何やら文字のようなものを書くと
硬くなった左前足に硬く結び着け
「目覚めよ」
「我泉の女神達に願い奉る」
「アリアンロッドの呪縛より我解き放ち」
「彼の者オルフェンと定め祝福を移したもう」
「ゴルゴダに付き従い守護する役目譲りたもう」
「モリガンの名の下に我と我らの契約をもって解呪とし」
「彼の者オルフェンにダークエルフの領域なでの加護と」
「ゴルゴダ死亡時の此方までの魂の運搬を命ず」
「フリード=ブリジットの名代としてアカシアが奏上奉る」
目の前ではピキピキピキと音を立て
まるで結晶のように硬かった子犬が
もふもふになっていった
『・・・オルフェンよあなたの頭に直接話しています・・・』
『・・・あなたには愛の勝利という加護を与えました・・・』
『・・・ダークエルフの神殿まで主人を導くことで・・・・』
『・・・あなたの愛する人を再び取り戻せるでじょう・・・』
もふもふしながら念話を飛ばし
抱き上げるとゴルゴダの元に持って行き
顔の横で放してあげた
白い仮面は回収しましょう
そう思い視線を外すと
ゴルゴダの目から一滴の涙が流れる
子犬はゴルゴダの顔を舐めた
眩い光があたりを包むと
子犬の装飾は無くなり
何も起きなかった
そう何も
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