第11話 赤と白の輪舞曲(ロンド)

オルトロスは躊躇していた


帰ることができるなら


目の前の敵を倒せばいい


万が一赤い方が倒れ


自分の存在とゲートが消えることだけは避けねばならないと





銀色の多頭蛇がまず動いた


滑るように移動すると首を一斉に開き


口から白い炎を吐いた


それはあたかも光線のようで


1点に収束すると人を包むほどの大きさになり


白くまばゆい太い帯は


守護者を覆い尽くし貫くかと思えた


しかし守護者の手首の結び目が解けると


螺旋のように手首に巻きつき


それはやがて肩にまで達し


肩の先で長く伸びると


その双肩の黒き帯は大きな羽になり


前に畳むようにその身を覆い


すぐさま開かれると


真空波のようなものが発生


その際いくつかの羽が抜け


あるものは地面に刺さり矛のように伸び上がり


あるものはナイフのように光線を切り裂き


白き濁流が触れもせずに霧散し


羽はその役目を果たしたように消え去ると


漆黒の大きな翼を広げ守護者は無傷であった


再度箱を守ったことにより何らかの制約が外れ


再び箱が光りを帯びると


その光が守護者の翼に導かれるように流れこみ


守護者の体がその光で覆われると


まず胸にあった白きクロスが光り


その下の慎ましかった双丘は


たゆんと膨らみ


母性を感じさせるほどの柔らかみを感じさせ


黒い目隠しはバイザーのようになり


それにより鳥類の鶏冠の様だった髪は


腰まである白髪ロング


姫カットのような髪形になり


両手は自由になり


螺旋模様は左右の腕に黒い三本のリボンが


蝶結びで結ばれたようになり


羽衣のような薄い肩掛けは


イブニングドレスのような形状のローブになり


厚みをまし大きな胸を包み込み


まるで認識阻害でもかかってるように


見えそうで見えないと


一言で言えば女神が降臨したようであった





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ヴァーミリオンは歯噛みしていた


まるで低級の召還生物のようだった白いのが


目の前で状態進化した


それでもこちらが絶対的強者だという認識はあるが


何故これほどに周到に仕掛けをして


守っているのか気になった


わたしのほうがぁ おおきぃ っていうかぁ


などと内心思っていたのだが


あの箱本当に願いが叶うのかもぉ


ホルスタインの排除と箱の調査


もはや破壊や中身の殺害などは考えられなくなっていた


一瞬見えた子羊のような娘


絶対にあたしの物にするんだぁ☆





行動は早かった


オルトロスの前に行くと


「遅ぃのは嫌われるよぉ」


と白い首筋に噛み付いた


オルトロスの目が赤く光り


白が黒を侵食していく





すぐさま銀蛇に近づくと下3匹の頭を撫でる


すると3本の首は赤く染まる


ヴァーミリオンは頭部の装甲を外すと


銀蛇の一つの頭に丸呑みさせる


その首が太く逞しく黒く染まる


その首に唇を当てると


鱗を


突き破り


牙が


刺さる


銀色の体液が流れ込むと


その首は熔けるように消えてしまった





「ちょこっとぉおぉすぎたぁ?」


「死ぬのわぁだめですぅ」





オルトロスは全身白くなり


双頭では無くなっていた


身を低く沈め一気に守護者に詰め寄ると


振るわれた刃を爪で弾き


胸に牙を立てようとしたその時


上段から頭に向かって降るわれた


刃にわずかに首を縮め上を向き


牙で受け逸らした


牙の先が少し欠けたが


致命傷は避けれたようで


大きく一歩下がることができた


そこに銀蛇が加勢をしてきた


赤い頭はコブラのような形状で


硬くて切れず


銀色の頭達は縦横無尽に襲い掛かり


それは斬っても斬っても再生していた





オルトロスはただ見てるしかなかった

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