儀式

それは 血塗られた笑顔だった

いかなる幸いを振り切ったものか

顔上がんじょうの深い紅は後ろめたさの素振りも見せず

崩壊した空の蒼を瓦礫の中からすくっては

ただれた肌のほのおに押し付けて

邪気を頬張りながらくよくよ嗤っていた……


そして 今

眼の潰れた黒い太陽が

燦々さんさんと人の道程にえている

夢を祭り上げた燭台の上で

無数の光の影が己を震わせている

自らの気性の激しさにろうとろ

ヒトの死の足跡そくせきからの歴史を流し込んでいる


……嗚呼 紅い紅い月だ!

緑青りょくしょうの風にそらが爪を立てて

淡い虹を狩ろうとしている

戸惑いすら忘れた理性の心臓を

漆黒の大烏おおがらすが猛々しく突き上げて喰らう!

喰らう 喰らう 喰らう……





















生命いのち

くよくよ嗤った私の生命よ

お前は今 一体何処いずこで何を想う


私の 私の 私の

透明すぎた野蛮な生命よ


遂にお前が果てたのなら

私もお前に突っ伏して

何処どこまでも いていってやるからな












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