台風の日に考える食への追究

KEN

台風の日に考える食への追究

※この作品は二〇一九年十月十二日、第5回 #匿名短編コンテスト・過去VS未来編 【過去サイド】に掲載されたものです。


 台風。日本では台風をはじめとした秋に吹く強い風を野分の風と呼び、古くから……うん、難しい講釈は私には無理です。

 とにかく、です。古文からも読み取れるように、日本は昔から台風に困らされてきたわけです。農作物はダメになる、建物は壊れる、人死には出る……。命あっての物種です。どんなにゴーストタウン化した繁華街が見たくても、どんなに畑の様子が気になっても、自分の安全を確保できる場所から出てはいけません。

 ところでですね、私も昨日の仕事帰りにスーパーに寄ったのですよ。そうしたら、ちょっと面白い光景が見られました。


 ないんです、バナナが。


 あの、いつもスーパーの果物コーナーでをきかせている黄色い果物。

 平時ではその存在がほぼ当たり前とされ、山盛りに売られている、あのバナナが。

 果物の中では比較的安価で入手でき、増税に苦しむ家計の味方である、あのバナナが!(食品は増税してないだろ、というツッコミはナシ。そもそも八パーセントになる前は云々、以下自主規制)


 ニュース等で取り上げられていたんでしょうか。それとも皆さん、自主的に買われていったのでしょうか。どちらにしても、これはなかなかお目にかかれない光景。他に考えられるとすれば、バナナの輸入先として有名なエクアドルやフィリピンの農園で大規模な災害が同時多発的に起こった時か、そもそも国交が断絶してしまった時か……いえいえ、暗い話はこのくらいにしておきましょう。


 とにかく、くすんだ黄色と黒の斑点が目立つ筈のコーナーに、バナナが一つも置かれていない。これは私にとって大変な衝撃でありました。

 ですが私はこうも考えました。バナナは大変優秀な食品であると。こうなるのは自明の理であったのだと。

 食物繊維豊富、ビタミンやマグネシウムも含み、容易に食べられて日持ちするエネルギー源。ですので、きっとこれは当然の現象。単に私の想像力が足りなかっただけの事なのです。


   ✳︎✳︎


 もう一つ、私はある食品に注目しました。それは二〇〇一年、2ちゃんねるの書き込みから生まれた風習。すなわち「台風コロッケ」です。

 「台風コロッケ」とは、台風が接近・上陸している際にコロッケを買って食べるというネタであります。これを最初に知った時、私は耳を疑いました。わざわざ天候の荒れた日にコロッケを買いに行く所業も信じがたいですが、謎の売れ行きを見せるコロッケを揚げねばならない店の困惑もいかばかりかと。「台風コロッケ」などという風習が本当にあるのか? 昨日スーパーで確認するまで、私は半信半疑でありました。

 結論から言うと、コロッケは数個程度しか残っていませんでした。他の惣菜も残り僅かとなっていましたが、私はこのコロッケの残量に思ったのです。ああ、「台風コロッケ」は実在したのだと(単に店側が作り足さなかっただけではないか? というツッコミは受け付けません)。

 考えてみれば、コロッケも片手で食べられる高カロリーなエネルギー源です。その主材料ともいえるじゃがいもには、やはりビタミン、食物繊維が豊富に含まれています。これを美味しく手軽に食べられる形にしたコロッケが売り切れ寸前となるのも、やはり必然だったのでしょう。


   ✳︎✳︎


 ここで、私から一つ、提案させて頂きたいのです。

 栄養満点のバナナと、未だに残り続ける風習「台風コロッケ」。これを融合させた「台風バナナコロッケ」こそが、台風に備えた完全栄養食と言えるのではなかろうかと。台風時の国民食として、バナナコロッケは広く普及して良いのではないかと! (わきあがる拍手と歓声)


 あ、以上の話はあくまでネタですので本気にしないように。そもそも、コロッケを作ってくれる店側の負担が半端ないし、家で作るにも手間がかかりすぎて駄目でしょう。

 ――と思っていたけれども、「バナナコロッケ」をクックパッドで検索したら、十三件もヒットする……。そして実は商品化もされてる(今もあるのか不明)らしい、マジか……。


 最後の最後に注意事項。バナナはカリウムを多く含んでますので、腎臓が悪い方は注意が必要です。きちんと専門の方と相談して下さい。

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台風の日に考える食への追究 KEN @KEN_pooh

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