第15話 棲む(5)

はあああ


なんっか


ヘンな方向に行っちゃったかなあ・・



高宮はバスタブに浸かりながら考えた。



そこに


「隆ちゃーん、」


タオルを身体に巻いた夏希がいきなり入ってきた。


「は?? なに??」


びっくりして一瞬おぼれそうになった。


「一緒にはいろ。」


と甘えたように言われて、



「い、一緒に??」


今までだって


一緒に風呂なんかに入ったことなんかなくて。


いきなりの彼女の行動に驚くばかりだった。



「背中、流してあげるからっ!」


満面の笑みで言われて


断れなくなり・・。



「人に背中流してもらうと、気持ちいいよね~。 あたし合宿所生活長かったから、よく後輩とか友達と背中流しっこしたりして。」


夏希は嬉しそうに高宮の背中をゴシゴシとタオルでこすった。


「はあ・・」


「頭も洗ってあげる~~。」


と、またも笑顔で言われて、


「えっ・・いいよ。 頭くらい一人で洗うし・・」


ぎょっとした。



「ほら、美容院とかでシャンプーしてもらうとさあ、気持ちいいでしょ? いいから、いいから。」



まあ


嬉しくないわけじゃないけど。


そーゆー店とか来てる雰囲気。


って・・行ったことはないけどさ・・



高宮はもう夏希にされるがままであった。





「は~~、気持ちいい~。 やっぱ登別だよねっ、」


お気に入りの浴用剤も入れて、夏希も一緒にバスタブに浸かった。


狭いバスタブなので、どうしても身体が触れ合ってしまって


「も~~、こんなトコじゃダメだってば、」


夏希は一人勘違いをしながら、顔を赤らめる。


「は・・」


高宮は顔をひきつらせて笑うだけだった。




そして風呂から上がった後に寝室に行って驚いた。


夏希は旅行に行くような大きなスーツケースを持って来ていた。


「な、なに? この荷物。」


「え? あたしの・・」


「だから、なんでこの荷物?」


「しばらくここに住んじゃおうかな~~って。」



髪を拭きながら笑顔で言う夏希に


「はあ??」


高宮は開いた口が塞がらなかった。


「隆ちゃん、今月末からNYなんでしょ? その間もあたし留守預かるし~。 もちろん、散らかさないから! 掃除もしちゃうし! 斯波さんたちにはまだ言ってないんだけど~~、」


「し、しばらくって・・」


「いつまでか決めてないけど。 んで、引越し先決まったらあたしもすぐに引っ越すから!」



いったい


どこから


この展開になったんだ?



彼女と暮らそうと言い出したのは自分だけど。


栗栖さんに言われて


とってもまだまだ


彼女はそんな段階じゃないって


思い始めたのに。


焦っていた自分を猛省したばっかりなのに。




ベッドに入って


夏希は高宮に抱きつきながら


「あのね。 斯波さんが言ってたの。」


「え?」


「ただ・・一緒にいたいから、隆ちゃんはあたしと一緒に暮らしたいって言ったんじゃないかって。」



「斯波さんが・・?」


「あたしに・・何も望んでないって。 きっとそれだけだって・・」



斯波が


そんなことを彼女に言ったのは


ちょっと意外だった。



一緒に暮らすなんて


絶対にやめとけって


頭ごなしに言うかと思った。



彼女の背中に手をやって


「・・うん、」


優しくキスをした。


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