第8話 裏表(3)
もう
絶対に昨日のことだということは
わかっていた。
斯波は高宮を誰もいない休憩室に呼び出した。
全くもう・・
一番、知られたくない人に!
高宮はため息をついた。
「・・加瀬。 あの後・・泣くばっかで。 なんも言わねえから。」
斯波は小さな声でそう言った。
「え・・」
「ケンカしたのか?って言っても。 首振るだけだし。 でも・・どう考えても、おまえがらみだってことはわかってるし。」
高宮は黙りこくってしまった。
斯波はやはり何も言わない高宮に少しイラっとし、
「なんであんなに泣かすんだっ!」
思わず声を荒げてしまった。
怒鳴られて、高宮もカッとなり
「あなたには関係ないでしょう!」
と言い返してしまった。
もう
日ごろからの鬱憤が
一気に爆発してしまった。
「だいたい・・あなたは彼女の上司で大家ってだけで! 肉親でもないし! いちいちおれたちのことに首をつっこんでこないで下さい! いまだにおれと彼女がつきあってるの、おもしろくなさそーに! おれと彼女がケンカしようが、首を突っ込んでこないで下さいっ!!」
斯波はそこまで言われて、拳を震わせた。
「あなたが引き止めてるんですか!? 彼女のこと!」
わけのわからないことを言い出す高宮に
「はあ?」
ちょっと気が抜けた。
「おれとなんか一緒に暮らすなとか! 彼女に言ったんですか!?」
もう、高宮は自分を失ってしまい、斯波に詰め寄った。
「な・・なに?」
完全に形勢が逆転して、斯波が気おされてしまった。
「もういい加減!! 彼女の保護者気取りはやめてください!! 彼女がおれと暮らすことを選ばないのは・・」
高宮は少しだけ自分を取り戻し
自分が今言っていることが
負け犬の遠吠えのように
非常に情けないことは
わかっていたが。
「あなたが側にいるからだっ!!」
斯波に
つかみかからんばかりに
そう言い放って
くるっと背を向けて、大股で歩いて行ってしまった。
なんだ・・?
アレ・・
ガツンと言ってやろうと思っていたのに
逆にガツンと言われてしまった
斯波は
呆然としてしまった。
加瀬が?
高宮と一緒に暮らす?
って・・
なに?
一方、夏希は。
もう仕事も手につかないほど
落ち込んでいた。
「あのなあ・・・。 ほんっと・・鬱陶しいから。 もう帰れよ。 意味なく残業なんかしないでさあ・・」
八神に言われる始末。
あれから
高宮に電話をしても、メールをしても
ナシのつぶてだった。
会社ですれ違う時も
無視されるし・・・。
まだまだ
恋愛初心者の彼女は
この事態をどう処理していいのかさえも
わからなかった。
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