第3話 提案(3)

夏希は家に戻ってからも



『一緒に暮らさない?』



と言った高宮の言葉をぐるぐると考えていた。





一緒に暮らすって・・


栗栖さんと斯波さんみたく?


あたしと・・


隆ちゃんが?




ようやく彼との付き合いにも慣れて。


本当に自然に彼とつきあっているのに



それって


世間一般に言う


『同棲』????


夏希は思わず頭をかきむしった。




まず、母の顔が頭に浮かんでしまった。




そんなんしたら!


お母さんに怒られる!


いくら隆ちゃんとって言ったって!!


そんなけじめのないことって。



しかも。


隆ちゃんは相変わらず、家族とは疎遠で。


最近は全く一線を引いて連絡もしてないみたいだし。



でも


いちおう・・


一緒に暮らすだなんてことになったら


隆ちゃんのお父さんやお母さんのことも


無視できないし!


あたし、ほんっと心象悪いし。



だからと言って


無断で一緒に暮らすだなんて・・


できないし。




いきなりあんなこと言い出すなんて


隆ちゃん、どうしたんだろう・・。




気がついたら


もう深夜になっていた。





高宮は昼休みネットで不動産情報を熱心に見ていた。


「え? なに? マンション?」


志藤が覗き込んできた。



「え・・ああ・・まあ。 今のトコ来年春に更新で。 狭いから引っ越そうかなって・・」


高宮は口ごもった。


「もう秘書課のチーフやもんなあ。 給料、めっちゃ上がっちゃったしな~~。」


「そういうんでもないですけど。」




夕べの夏希のリアクションに


少々、ガッカリしていた。



もっと


喜んでくれるかなって


思ったりしちゃったのに。



だいたい。



なんでおれがいきなりあんなことを言い出したかって。


それは


あいも変わらず、彼女のマンションに行くと


たまに斯波さんとバッティングしちゃって。


あの怖い顔で


『また来たのか』


みたいな目えされて。


ほんっと針のムシロで。



彼女をあそこから引っ越させたい・・




そう思ってしまったのがきっかけだった。

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