第2話 提案(2)
「それでさ・・」
高宮が話の本筋に入った時
やっぱり目の前の夏希は肉に夢中だった。
「聞いてる?」
思わず確かめてしまった。
「え! 聞いてますよ!!」
夏希はちょっとビクっとしてそう言った。
絶対に
聞いてねえ・・。
高宮はため息をつきながらも、
「・・一緒に、暮らさない?」
彼女の目を見て
はっきりとそう言った。
目を見て言ったのに。
「・・・・」
夏希は肉を箸で掴みながら、固まったままだった。
そして、手は自動的に彼女の口に肉を運ぶのだった。
「って! リアクションゼロ??」
さすがに高宮はムッとした。
夏希は口を動かしながらも、半ば呆然として
「・・今、なんて?」
耳の遠くなった老人か?
とつっこみたくなるほど、あからさまに聞き返された。
「だから! 引っ越したら一緒に暮らさない? って!」
ちょっとやけになって、大きな声で言ってしまった。
肉がジュウジュウ焼ける音が
その沈黙をつなぐように。
「だれと・・?」
夏希はさらに高宮をいらだたせる。
「今、おれの前には夏希しかいないだろ! 誰に言ってると思ってんだよ!」
つい怒ってしまい、
「ご、ごめん・・」
夏希は反射的に謝った。
「今だって。 おれが忙しくない時はほとんどどっちかの部屋で過ごしてるし。 つきあって、2年近く経つし。 広いトコ引っ越したいって思ったのも、夏希と一緒に暮らしたいなあって、思って。」
高宮はあまりに自分を凝視する夏希の視線に恥ずかしくなり彼女から目を逸らした。
「夏希はお金がなくて、よくヘンなもん食ってるし。 そんなのよくないし。 おれと・・暮らせば・・そういうの不自由させないし、」
赤面しつつそう言う彼を見て、夏希はカタンと箸を置いた。
「隆ちゃん・・」
夏希は彼の言っている意味がようやくわかって
いきなり動悸が激しくなってきた。
思わず胸を押さえる。
な・・
なに?
一緒に暮らそうって・・。
あたしが!?
彼女のリアクションに
「なに?」
高宮は怪訝な顔をして彼女を覗き込んだ。
「な・・なんか。 ど、動揺・・」
夏希は目の前のビールの生ジョッキを一気に飲んだ。
「動揺??」
いつもながら彼女のリアクションはわかりづらかった。
一気に沈黙してしまった彼女に、
「や、ちょっと考えてただけだから。 ・・考えておいて、」
高宮は無理やり話をまとめた。
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