24


今日もいつものように坪内さんを起こしに行く。

相変わらず大爆睡だ。

名前を呼んでゆさゆさすると、これまたいつものように腕を引っ張られる。


「うわっ!」


今日は初めてベッドへ倒れこんでしまった。

しまった、手のつき方が甘かったか。

坪内さんは私を引き寄せると、抱き枕のようにぎゅっと抱きしめた。

意外と強い力で逃れられない。

坪内さんの温もりが全身に広がってくる。


「ね、寝惚けすぎです!坪内さん!」


胸をぐっと押しやると、急に坪内さんが覆い被さるように私を覗きこんできた。

私の目の前に坪内さんの綺麗な顔がある。


これは…もしや押し倒されてる状態なのでは?


坪内さんと目が合って、彼の目はもう全然寝ぼけてなんていない真剣な目だったので、私は身構えてしまう。

心臓が跳ね上がりそうなくらいドキドキして、鼓動が聞こえてしまいそうだ。

なになになに???

こ、これは、まさかのキ、キスされるのでは。

近づいてくる顔に、思わず目を閉じた。


あれ?

唇には何の感触もない。

違和感があるのはおでこ。

どうやらおでことおでこをゴッツンコされている。

はい?

これは一体どういう状況なのか。

理解できない。

それでも、じゅうぶん顔が近いぃぃぃ。

テンパる私をよそに、坪内さんはさっと離れたかと思うと、


「秋山、熱があるな。」


と言った。


それは今のドキドキで体温上がっただけじゃないかなー?


「大丈夫ですよ。」


パッとベッドから起き上がってみせる。

うん、別に何ともない。

フラフラしたりしない。


「熱計ってみろよ。」

「えー…。」


渋っていると坪内さんが体温計を出してくれる。

仕方なく計ると、37.8度と表示された。


あれ。

ほんとだ。

微熱がある。


「微熱だから大丈夫ですよ。」

「ダメだ。今日は仕事休み。」

「行けますって。女子は体温の変動が激しいので、これくらい平気です。」


だって自分で気付かないくらいだよ。

私の話を無視して、坪内さんはどこかに電話をかけた。


ちょっと、私は無視ですか?

ていうか、誰に電話してるの?


「もしもし、課長?坪内ですけどー。」


か、課長に電話?


「秋山が熱だから休ませますね。え?もちろん俺も休みますよ。はいはい、どうも。失礼しまーす。」


課長に向かってめっちゃラフな会話だな。

それより、何で私の休暇連絡を坪内さんから伝えるの?

そんなことしたら、坪内さんと一緒に住んでるって、課長にバレちゃうじゃん。

しかも、俺も休むとか言ってなかった?


「あ、あの、坪内さん?私、一人で大丈夫なので、仕事行ってください。」


私の心配をよそに、坪内さんは平然と答える。


「え?もう課長に休むって伝えたし。それに秋山が心配で仕事どころじゃない。」

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