21
「日菜子の気持ち、ちゃんと王子様に伝えなよ。好きってことだけじゃなくて、不安なことも全部だよ。」
〆のバニラアイスを頬張りながら、奈穂子が諭すように言う。
不安なことも全部かぁ。
もし受け入れてもらえなかったらどうしよう。
もう、私はネガティブな思考にしかならない。
「私は王子様なら受け入れてくれるに1票。」
奈穂子はそれだけ言うと、バニラアイスをペロリと平らげた。
奈穂子はそう言うけどね、本当に自信ないんだよ。
ていうかさ、奈穂子ったら自分のバニラアイスだけ頼んで私のは頼んでくれなかったわけ?
もやっとした気持ちでいると、ふいに私のスマホが鳴り出した。
表示名は【坪内】となっている。
スマホ片手に固まる私を見て、奈穂子が覗きこんでくる。
「出ないの?」
「だって、私、坪内さんに連絡先教えてないのに、どうして?どこの坪内さん?」
困惑する私からスマホを奪うと、
「私が出てあげる。」
と言って勝手に操作してしまう。
「ちょっと待って奈穂子!」
私の叫びはむなしく、どこぞの【坪内】さんと奈穂子は喋り出す。
「はい、あ、私、日菜子の友達の天野です。あ、そうです。え?いえいえ、もう帰るとこですよ。私が長く引き止めてしまってすみません。はい、わかりましたー。失礼しまーす。」
軽い調子で受け答えする奈穂子に、本物の坪内さんからの電話だったんだと確信した。
電話を切った奈穂子は、ニンマリとした笑みで私に伝える。
「王子様、迎えに来てくれるって。」
「えええええっ!」
何て勝手なことをしてくれてるんだ。
焦る私をよそに、奈穂子は満足げに微笑んだ。
奈穂子と話し込んでいたので、いつの間にか遅い時間になってしまっていた。
お会計を済ませてお店の外で待っていると、坪内さんがやってくる。
遠くからでもわかる、あのシルエット。
本当に、私ったら坪内さんをすぐ見つけてしまう。
悔しいけど、それほどまでに彼のことを気にしている。
坪内さんは私たちを見つけると、軽く手をあげた。
「天野さんも送るよ。」
出たよ、イケメン発言。
私だけでなく奈穂子のことも送るとか言う。
奈穂子はまんざらではない顔をしながら、でもきっぱり断る。
「いえいえ、私も彼が迎えに来てくれるので大丈夫です。またね、日菜子。じゃあ、失礼しまーす。」
奈穂子は坪内さんに向かって丁寧にお辞儀をして、私には軽く手を振った。
さながら、さっさと消えろと言わんばかりな目をしている。
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