五章 ◆もうちょっとお世話になってもいいですか
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昨日今日と、坪内さんと一緒に家を出て一緒に出勤している。
本当は他の人に見られたくなくて時間差で出勤しようと思ってたのに、坪内さんの支度が遅くてついつい手を出してしまう。
そうこうしているうちにギリギリの時間になって、一緒に出勤をせざるを得ない。
逆に私がいないときはどういう時間の使い方をしていたのか疑問だ。
遅刻はしていなかったと思う。
課長が私に仕事を振りながら、私にだけ聞こえるような声のトーンで聞いてくる。
「最近坪内くんと一緒に出勤してるんだ?」
坪内さんちにお世話になってるとは言えず、
「ええ、まあ。」
と曖昧な返事をする。
ていうか、最近って2日間だけなんですけど。
よく見てるな、課長。
「秋山さん、坪内くんなら大丈夫だよ。俺が保証する。」
何を根拠にそんなことを。
いや、それより、なぜそんなことを言いますか。
絶対何か知ってる顔だ。
含み笑顔が物語ってるよ。
課長は仏の笑顔で仕事だけきっちり置いて去っていった。
明日は土曜日で仕事が休みだ。
不動産屋さんに行くぞ。
社内メールで、奈穂子から連絡があった。
今日暇なら飲みに行こう、と。
私はいつでも暇ですよ。
すぐさまOKと返事をする。
根掘り葉掘り聞きたいんだろうなぁ。
奈穂子のニンマリした笑顔が想像できる。
そうだ、今日は遅くなるって坪内さんに伝えなくちゃ。
そんなことを思ってしまった自分にびっくりだ。
違う違う。
一緒に住んでないから。
今朝までお世話になっただけで、今日こそビジネスホテルに泊まるの。
坪内さん関係ない。
今日も帰りがけに坪内さんは鍵を渡してくる。
「今日は奈穂子と飲みに行くから鍵はいらないです。」
と返した。
「あんまり遅くなるなよ。」
「はーい。」
坪内さんの言葉に元気よく返事をしたけど、今日は帰らないからね。
ビジネスホテル行くからね。
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