明けない夜に久作を想う

明日からまたどうやって生きようかなんて問い考えるだけ空虚でしかないから、何も考えずに泥のように眠ろう。

きっと久作にもいつかこんな気持ちで過ごした夜があったはずだから。


画面の中、一枚の写真の中、そして大して厚みもない文庫本のなかの彼は、それでも私に悩み、怒り、涙を流す夜のうつくしさと空虚さを教えてくれる。


あんな冷静な感情爆発のような小説を書いておきながら、人としては彼の方が随分とまともで。でもそのちぐはぐさに私は恋したわけで。


だからこんな夜は嫌い。彼に追いつくことが叶わないように思われる暗い夜は大嫌い。


だけど、いつか久作が見た世界を、懸命に生きてさえいれば見られるはずだと信じているから私はまだこの空虚な夜を耐え抜くしかない。


もしかしたら、もしかしたらこの夜が明けたら彼に僅かでも近づけているかもしれない。そう信じて、夜明けまで。

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生まれ変わったら夢野久作の嫁になりたい 姫草ユリ子 @Yuritica0609

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