第3話 ドラキュラさんの休みは長い
「思ったより熱いな..」
何だこの陽気は?
これ程迄に太陽は熱かったか?
やはり黒で来るべきでは無かったか?
しかし黒しか持ってない。
他も買えって?色を増やせと?
他の着てたら言うだろ?
絶対言うだろ俺ドラキュラよ?
「乱発するとしんどそうだ控えよう」
とにかく店探しだ、陽の光を物ともせず快適な食事の出来る安全な場所。
「逃げでは無く効率を考えた策だ」
何処かにいい店はないか?
「ほう..オープンカフェか。」
テラスの向こう側の席を取るとしよう
「いらっしゃいませー。
お一人様ですか?」
「..はい。」
「おタバコは?」「吸いません。」
「それではお好きな席にどうぞー。」
「どうも..」
ふん、日差しよオサラバだ!
眼鏡は外せんが、差し込みによってはこう..マズイからな。
「お好きな席か、選択肢を与えるとは安易な事だな。」
安心しろ、窓際を取ってやる。
何せ今日は弱点を克服する日だ!
「最早お前に勝ち目は無いがな。」
次は飯か、長らく口にしていないな。
「メニューは..あった、これか」
ふむ..ここはイタリアンが貴重の店か少食の私にとっては丁度良いな、場合によって常連になってやろう。
「トマトの冷製パスタ、何だこの心躍る良い響きは。」
絶対美味いに決まってる。
早速これに..待てよそれでいいのか?
「よく吟味しろ、これではいつもと同じ事だ」
愉しい食事も魅力的だ。がしかし今回は、弱点を克服しに参ったのだ。普通ならばこれでいい、がしかし今は..!
「ペペロンチーノ..ください。」
「かしこまりましたー、直ぐにお持ちしますね。」
「ふぅ..」
これでよし、完璧な食事だ。
「……。」
それにしても何だこの店の客達は。
ブラックコーヒーを飲みながらパソコンを開いて仕事のフリか?
「かっこよくないぞ、それ..」
おっと、ここではマックと呼ぶのだったな。失敬失敬..ふははは!
「あ、そうだ。」
手袋をはめるのを忘れていた、店の食器はだいたい
「我は無敵なり、ふははは..」
「あの人一人で笑ってる〜」
「何あれ、あやしー。」「……」
おっと、聞かれてしまったか。
他人で良かったな、でなければ今頃...
「お待たせ致しました!
こちらペペロンチーノになりまーす」
「あ、どうも..。」
命拾いしたな娘達、安堵して食事を愉しむといい。
「私もそうするとしよう」
どれどれ..御賞味といくか。
「フォークは銀か、やはりな。」
対策はバッチリだ..頂くとしよう。
「くっ..!」
思ったよりニンニクがキツいな、少し侮っていた。しかし残す訳にはいかん己で頼んだのだ、それを残して棄てるのは吸血鬼以前に生物のモラルだ。
「安心しろ、全て喰い尽くしてやる」
...ん、何だこれは?
「四角い紙が..」
これは、国旗か。
誤って混入している訳でも..無いしな
「何故旗が中心に?」
「それ、店の遊び心です。」
「..え、うあっ!」
先程の店員か、愛想が良すぎて反応出来なかった。恐るべし接客業!
「ランダムで世界の国旗を真ん中に刺すんですよ?」
「あ、そうなんだ..」
「面白い事考えますよねー。」
なんだというのだ。
結局は店長の悪ノリか、付き合わされる客の身にもなれというものだ。
「気に揉んで損をした..!」
そんな旗、フォークの錆にしてくれる
「くらえ!」
...おい、ちょっと待て。
これ、このマーク、スウェーデンの旗
「十字の模様..!」
ここにも罠があるのか!
何個だ、何個踏み直せばいい!?
「す、すまんっ!」「はい?」
「そ..そのっ!」
「今行きますね。」
しまった!
遂勢いで店員を呼んでしまったぁっ!
「どうする、何ていう⁉︎」
旗が十字架を連想するから替えてくれなどと、そんないかにもな事言えん!
「どうかされました?」
「いや、あの..ですね、この真ん中に立ってる旗、なんですけどぉ...」
「スウェーデンですね、綺麗な国みたいですよ。水の都だそうです。」
「………」
「もしかして..お嫌い、ですか?」
「い、いえ..。」
言いにくい、ここで変えて下さいは!
水の都を否定するのは酷過ぎる!
「あんの、スウェーデンって..!」
「変えておきますね。」「えっ?」
「こういう時の為に旗のストック持たされてるんです、変ですよね?」
変なことがあるか。旗を抜いて、新たな国が創られる。
「有難う御座います..」「いえいえ」
「それでは、ごゆっくり!」
感謝するに値する良い店員だ。心から褒め称えたい。
「改めて、頂くとしよう。」
漸くか、長かった。
遂に相間見える私とペペロンチーノ...
「ん?」
この変えた旗..スイスの国旗か。
「赤い旗に十字...。」
確か血を表す赤に、白で精神を表現しているのだよな。
「より強めになってるじゃないか..」
あの女、厨房の裏でほくそ笑んでいるのではあるまいな。
「親切だと気を許すべきでないか?」
どちらにせよもう奴は呼べん。
こうなれば..自ら倒すしかっ!
「指先一つで下してやる」
簡単だ、旗を摘んで..引き抜くだけ。
「ふははは..さらばだ十字架よ」
勝利は我が手に、盾は壊れた...!
「ああっ!」
旗が..横にっ、倒れた!
「直ぐに拾わなければ..!」
ダメだ、麺と麺の間に絡んで指が入らない。
「手袋を外すか..」
よし、これならば入りそうだ。
旗を捉え、掬う..!
「国は我が手に」
さらばだスイス、漸くこれで弱点を克服できそうだ。
「国の次はニンニクの城だ..」
口に放り込んでくれる!
「ぷっ..あぁっ!」
これ程までにニンニクが...侮っていた
しかし私は英国紳士、飯は残さん。
「がっ..ぐおぉっ!!」
必死にかき込んだ、それはもう必死に
「ぐふっ、ごちそうさまだ..!」
身体中から熱が..見ろ、右手からは最早煙が。
..違う、これは食器のフォークで。
「銀の痛みだ、ベタ過ぎる..」
あざとさすら伺える程に。
「手袋外しがアダになったか...」
「大丈夫ですか!?」「..はい?」
「慌ててたから。」
「……」
そこまで私を気にかけて、この娘..。
「待っててください」
「あちょっ..!」「はい、お水です。」
「どうも..。」
コップに入った潤いを思いきり飲んだ
ぐいと一気に飲み干した。
「…ぐっ..」
何故私は気付かなかった?
雑味の無い森の恵みは、それは...!
「聖水だぁ...!」「あっ!」
そこから先は随分と記憶が飛んだ。店を飛び出し、街を彷徨い、気がつけば夜になっていた。
「..ここは?」
月が笑っている、一日が終わるのか。
「はっ、そうだ。
本屋に寄らなければ」
弱点を葬った証として本を購入しなければ。選んでいる余裕は無い、フラつく頭で、手に取ったものをレジに持っていこう。
「本屋は何処だ..?」
呟けば視線の先に本屋があるのだ。
「やはり夜とは相性がいいな..」
四角い紙を脇に挟みレジへ、愛想が無くて悪いな店員。
「カバーをお付けしましょうか?」
忘れずの気遣いはいい!
場合によっては生命を殺めるぞ。
「いえ、大丈夫です..」
「当店の会員カードは?」
それは健康のときもいらん!
「持ってないです..。」
「3000円になります。」
高いな..この際値段はいい!
「丁度おあずかりしますね。」
確認せずともわかるだろっ!!
「ありがとうございましたー。」
「ふぅ..」
今日は散々だ、冒険をし過ぎた。
「帰って静かに眠ろう」
「ちょっといいですか?」「はい?」
「警察の者ですが。」 「あぁ..。」
しっかり職務質問か..フルコースだな
「風邪以上に体調が悪い..。」
翌朝、買った本を開けてみた。
「聖書か、成る程な..」
道理で高かった訳だ。
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