第4話 ドラキュラさんの容態は急変する

私がドラッグストアの次に行く回数が多い場所、それが病院だ。

「身体を行使し過ぎた..!」

皮肉にも同じ薬の匂いがする。

違いといえば、女優がcmをやっていない事くらいだ。


「私の熱はどこからだ..」

それにしても人が多いな、病気がネックなのはここだ。通うものが後を絶たない、いつ皆の気分が優れるんだ。

「ドラキュラさーん?」「あ、はい」

と言いつつ私の番だ、済まんな。

事前に予約を入れてある。

「こちらへどうぞ」「どうも。」

但し一つ難がおる。

「また来たんですか」「悪いかっ..!」

ここの病院の医者は酷く嫌な奴だ。

「心音聴くから、胸を出して下さい」

「まだ何も言ってないだろ⁉︎」

「言われなくても分かりますよ?

あなたがここに来る時は大体原因は幾つか。銀、ニンニク、十字架...」


「指折り数えるな!」

「心拍数上がってますね。」

このように人を軽く視て決めつける適当男だ、しかしそこに医療の知識が加わっているから必ず当たる。

「人じゃないんですから、無理しないで下さいよ」

「..お前だって化けキツネだろ。」

「白狐です、何度言わせるの?」

人に善を与える狐というが、どこに良心がある?

それとも私が人外だからか!

「でも運が良いんですよ?

あなたが人では無いから普通の方より

治療はスムーズだし、早く体調を見れますしね。」

始まった、いつものやつが。

「ちょっと失礼しますね」

デリカシーの無い奴め、油断しているのか。毎回私の前で本性を晒すな!

「お身体拝見しますね。」

「..いつも何をやっているのだ、目を瞑って人のカラダをジロジロと。」


「瞑っていませんよ、心眼治療といいましてね。きちんと全て見ています」

心の眼という奴か、不気味だ。

「助兵衛が」

「そういうものですよ?

医者の殆どは異常性癖の変態ばかりです。」

ヤブ医者よりタチが悪いではないか!

「はい、見ました。

酷いですね、そこら中ボコボコです」

「やはりか。」

当然だ、ニンニクを鱈腹ほうばった後銀で肌を焼き聖水で浄化したのだからな、枕は聖書であったし。

「処方箋を出してくれ。」

「処方箋といっても痛み止め程度ですよ、貴方の外傷は精神性なので自然治癒を待つしかないですから」

「使えんな..」

「無理をするからですよ。

聖水による炎症はトマトジュースで抑えて下さい。」

「何?」

「聖水は純なる異物なので、雑味で濁せば尿で徐々に溢れます。時間はかかりますけどね」

「そうだったのか..!」

まさかここで奴に救われるとはな、ストックを切らさなくて良かったわ。

「腕のただれは皮膚科に頼んで軟膏を貰っておきます。あとは..特にありませんね、お会計までお待ち下さい。」

滞りなく進めおって、慣れた感じを出されると早く帰れ感が強まるぞ。

「それにしても無防備だな、平然と客の前で姿を晒すとは。情報化社会を舐めているのか?」


「安心して下さい。

ここに勤務する方は皆味方ですから」

「うふっ。」「シャー!」

一つ目に..蛇女っ!?

「またのお越しを。

いや、元気な方がいいですよね」

「有難う御座いましたぁ。」

..嫌なものを見たな。

会計を済ませて直ぐに帰ろう。

「なっ⁉︎」

さっきより客が増えている。

それ程優れないならドラッQに来い!

そして私の糧となれっ!

「席がない..」

角の壁際を取られている。

空くには空いているが、でもな。

「センターはキツい..!」

それも前列の中心、受付の前だ。

「仕方がないか」

嫌なのだ、集合写真でもそうだが己から真ん中に行く奴はロクな奴がいない

器も無いのに船長に成りたがる。


「私は縞模様のクルーでいいのだ..」

第一何故会計如きでこんなに人が。

見渡しても思う程の重病でもない...

「ん?」

この頭、どこかで..。

近過ぎて気がつか無かったが一部に包帯が...

「ぷっ!」「……?」

しまった、つい吹き出してしまった!

円状の頭部、欠けた皿、間違いない。

「〝ヤツ〟も来ていたか..。」

態々病院までか?

軟膏は効かなかったようだな!

「静かにしておこう..」

バレると厄介だ、陰気な奴だからな。

「あれ?」どうした?

「あっれぇ..?」もしやバレたか⁉︎


「保険証がねぇ!」なんだアホか。

普通無くすか病院だぞここ。

「どこいったかなぁ..ポケットの中も鞄の中も見たけどないしな、あっ!」

何するつもりだ、やめろ。

いちいち怖いんだよお前は!

「ここか..そうだここだったわぁ!」

欠けた皿を外すな!

どこにしまっているのだ!

「取れるんだな、それ..」

甲羅の中とかでいいだろう、なら。

「河童さーん。」「あ、はい!」

めまぐるしいなお前の時間。

羨ましい限りだリア充め、恥を知れ。

「中身がえっと軟膏と...あっ!

少々お待ち下さい。」

「あ、え?」「一旦席に..」

どうしたどうした、返されたぞ。

皿が欠けてるからだふははは!

「じゃあその間..」

「あ、そうですね。いいかもです」

なんだ、何を話してる?

「すみません。」「いえ、別に」

不備など認めん、戻ってくるな。

「..帰れ!」

金を払って帰宅しろ!

「はぁ..」

やめろ座るな、席に座るなぁっ!

「……」..ん?

どこに行く、窓際?

「いいですかね..あ、大丈夫ですか」


「それじゃあ失礼しますねっ!」

「おい、やめろ。やめろ..!」

「割れた皿は充分に乾かしてくっ付けるのがいいらしいからな。」

カーテンを、開けるなぁっー!!

「河童さーん。」「あ、はい!」

「すいません、もう一つお薬つけ忘れてました。これ皿が痛んだ時の鎮痛剤

です、お会計合計で2000円です。」

「どうも」

背中見せて知らん振りか?

検査もするしとコートを脱いだら日差しがINだ!

「有難う御座いました。」

お礼を言うな、そんな化け物に。


「許さんぞ、水辺の悪魔..」

おのれカッパアァアァッ!!

「次会えば体を干からびさせてやる」

軟膏塗って帰らなきゃ。


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