第9話 彼女の介護

「おまえもか!?」

 渋子は、今度は老人介護ホームで介護の仕事に就職した。

「キャアアアアアアー! 助けてください!」

 毎度おなじみカワイイ看護師の若い女の子が、介護施設の変態オーナー、変態所長、変態介護士の先輩たちに襲われていた。

「新入りは黙っていろ!」

「雇ってやった恩を忘れたのか!」

「また無職になりたいのか!」

「次はおまえの番だ! 楽しみに待っていろ!」

 変態さんは自分の強い立場を利用して、弱い立場の者を脅す。

「そんなこと知るか! 困っている人がいたら助ける! 私の辞書に不可能はない!」

 決して悪の軍門には従わない渋子。

「生意気な! こいつから襲ってしまえ!」

「やれるものならやってみろ! ニコッ。」

 渋子は笑顔で合図を送る。正にシンデレラ・スマイル。

「警察だ! おまえたちを強姦の現行犯で逮捕する! 死にたくなければ手を上げろ!」

「け、警察!?」

 その時、100人の警察官が拳銃を構えて現れた。

「クソッ! 覚えてろよ!」

 変態さんたちはパトカーに乗せられて署まで連行されていった。

「忘れるわ。それより、ここの働いた分の給料は出るのかしら?」

 生活費の心配をする渋子。

「いつも手柄をくれてありがとう。」

「ヤスさん。」

 警察官のヤスは何かと渋子を助けてくれる。

「警察から捜査協力のお金が給付されるから安心しろ。ハワイにでも行ってこい。」

「やったー! ありがとうございます!」

「現金な奴だな。まあ、渋子のおかげで俺の出世も早そうだしな。」

「これで生きていける! ああ~生きてて良かった!」

 渋子は上機嫌で現場を去って行く。

「あんなもんで良かったですか?」

「ありがとう。これ謝礼の100万円。」

「ありがとうございます。」

 ヤスがお金を貰うのは渋子の母親からである。既にヤスは警察官でありながら、民間人にお金で買収されている。

「私が渡しても素直に受け取らないのよ。こうでもして受け取って貰わないと、大切な娘が栄養失調で死んじゃうじゃない。」

「これからも奥様に忠誠を誓います!」

 警察官も安月給、24時間勤務の激務。普通に暮らしていては生きてはいけないのだった。

「今度はどこに旅行しようかな? 本当にハワイ? いや~海外旅行に行く前に水道代を払わなくっちゃ。ハハハハハ。」

 そうとは知らないで呑気な渋子であった。

 つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る