第8話 彼女の奈良
「高野山! 今度は奈良に行ってきます!」
「きっと御利益があるわよ。」
「ありがとう! リョウコさん!」
「鹿に食べられないように気をつけてね。」
渋子は警備会社の給料で奈良の高野山に厄払いに行くことにした。渋子の趣味はパワースポット巡りである。
「塩を撒け! 塩を!」
「はい! 店長!」
旅行会社のオーナーは渋子の母親で、働いている社員たちは気を使うので渋子が苦手だった。
「奈良って有名な温泉がないのね。私が自分で掘ろうかしら。」
渋子の辞書に不可能の文字はない。
「名産は鹿煎餅か、リョウコさんが好きそうだわ。大量に買ってあげよう。」
リョウコはいったい何に見えているのだろう。
「大仏に、お寺か、次の仕事は歴史学者とかもいいわね。」
奈良観光しながら新しい仕事も気分転換に考えるのだった。
「掘れ! 掘れ! まだ誰も発見していない土器を見つけるのだ!」
渋子は歴史考古学者として、土器の発掘調査を行っている。
「出たー! 新種の土器だ! 私の辞書に不可能はない!」
そして渋子はなんなく新種の土器を発見する。おそろしい渋子のスキルだ。
「ということで、新築マンションの建設工事は中止してもらいます!」
土器の発掘現場は、新築マンションの建設現場だった。
「そんなことができるか! 俺たちだって生活が懸かっているんだ!」
「そうだ! そうだ!」
マンション建設で給料をもらって生活している現場の建設作業員たちから大反発をくらう。
「マンションを移動して建設しなさい!」
「できるか!」
「いいでしょう。私がマンションの設計をし直しましょう!」
「できるのか!? あんたに!?」
「実は私は設計士だったのです!」
もちろん渋子の嘘である。そして即座にマンションの設計を行う。
「できました! 新築マンションの設計図!」
「おお! すごい! これなら土器の発掘現場を守って、新築マンションも立てられる! あんた! すごいぞ!」
「私の辞書に不可能はない! ワッハッハー!」
こうして土器を守り、新築マンションの作業員の生活も守った渋子であった。
「・・・もう食べれません・・・おかわりは・・・結構です。zzz。」
という夢オチである。さすがに渋子が一級建築士というのは、都合が良すぎるので夢ということにした。
つづく。
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