第7話 彼女の誤算
「た、高い!?」
渋子は高層ビルの屋上の展望フロアの警備の仕事を始めた。しかし、彼女は高所恐怖症だったことが判明した。
「暑い!?」
高層ビルの屋上は、焼き肉の鉄板の様に暑かった。
「寒い!?」
冬は強風が吹き、冷凍庫の中の様に凍りつくくらい寒かった。
「外人ばっかり!? 私、英語がしゃべれない!?」
展望台は観光客の外国人ばっかりで日本語は通用しなかった。
「もうダメ。私、生きていけない!?」
渋子、生活の危機。高層ビルの屋上の警備は、想像以上に厳しかった。
「私もダメ。まさか、こんなに過酷な仕事だとは思わなかったわ。渋子さん、一緒にやめましょう。このまま続けて、もしも体を壊したら家賃が払えなくなっちゃうもの。」
「そうねケイコさん。私も他の仕事を探すわ。」
ケイコさんとは警備会社で知り合った。彼女も私と同じ境遇、同じ理由で気軽な気持ちで警備の仕事に申し込んだ。私とケイコさんは同じ立場なので共感しあえる関係だった。現代人は私やケイコさんと同じでお金がなく、仕事がなく、苦しんでいる人が多い。
「こら! 仕事中に楽しく会話してんじゃねえ!」
「あ、隊長だ。」
「すいません。」
その時。警備隊の隊長が現れた。
「隊長! お話があります。」
「なんだ?」
「私たち仕事を辞めようとおもいます。」
「許さん! 人手不足でギリギリの人数でシフトを回しているんだ! 辞めるなんて認めないぞ! 私なんか1週間も家に帰ってないんだからな!」
「ええー!? なんてブラック企業なの!?」
「でも警備の仕事は辛いよ! 辞めたいよ!」
泣き出すケイコ。これが警備業界の過酷な実情だった。
「キャアアアアアアー!!!」
その時だった。外国人観光客のお子さんが塀を乗り越えて屋上展望台の塀の外に出てしまう。
「危ない! 助けなきゃ!」
「無理よ!? 渋子!? あなたが落ちちゃうわよ!?」
「なんとかなるわよ! 私の辞書に不可能はない! ニコッ。」
渋子は全速力で塀を飛び越えて子供を助ける。危険なシーンはCGか合成で撮影してもらおう。渋子は子供が助かって、良かったと胸を撫で下ろした。
「ええー!? クビですかー!?」
正確にはクビというよりも、今回の子供転落未遂事件がSNSの時代に拡散されテレビの全国ニュースで放送され、警備会社は責任をとって、他の警備会社に交代させられたのだった。
「ああ~、また仕事を探さなくっちゃ。」
渋子が定職に定着できる日は来るのだろうか?
つづく。
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