第2話 彼女の趣味

「どうか、定職に着けますように。どうか、正社員になれますように。どうか、月給30万ありますように。どうか、宝くじが当たりますように。」

 渋子は自身の不幸から厄を払うために、神社に行ってお参りをする、パワースポット巡りが趣味になってしまった。

「我を救いたまえ! アーメン!」

 渋子は島根県の出雲大社に来ている。

「ここは縁結びの神社ですよ。」

 出雲大社の御利益は縁結びである。巫女から冷たいツッコミがはいる。

「いや~しじみ汁、美味しい! やっぱりしじみは宍道湖よね! 傷ついた心が癒されるわ!」

 そして、せっかく来たので地元の美味しい名産品を食べて帰る。

「気持ちいい! お肌すべすべ! やっぱり温泉は玉造温泉よね! 日々の労働の疲れが取れるわ。」

 そして宿で一泊して帰るのが、女一人旅が渋子の旅のお約束のコースである。こうして渋子は働いたお金は全て使い果たすのであった。

「島根県! 最高!」

 地方ロケで楽しむのと地方観光名所や温泉、土産のPRにもなる、渋子と地方はWinWinの関係である。

「さあ! 新しい仕事を探すぞ!」

 貯金の無い渋子は東京に戻り、リフレッシュしたので前向きに新しい仕事を探すのだった。


「どこかに良い仕事はないかな?」

 渋子は電信柱にぶつかりながら職探しをする。

「あら? 渋子ちゃん。」

 そこに一台の高級車が渋子の横にやって来て窓を開けると一人の女性がいる。

「あ、社長。」

「あ、社長じゃない。そこは、ああ~!? お母さん~!? でしょ?」

「・・・・・・。」

 オーバーなリアクションを求める母親を冷たく見つめる渋子。

「さようなら。私は仕事探しで忙しいの!」

 渋子は母親の元を去って行こうとする。

「渋子ちゃん、お寿司、食べていかない? 奢るわよ。」

「行きます! 行かせてもらいます!」

「あなた、相変わらず食べ物に弱いのね。心配だわ。悪い男に着いていかなければいいけど。」

「ワンワン。」

 我が娘ながら呆れる渋子ママ。


「美味しい! 大将! 大トロ! もう1貫!」

「はい。毎度。」

 渋子母娘は銀座の高級お寿司屋さんで美味しそうにお寿司を食べる。

「なんだか私、美味しいものを食べてばっかりなんだけど?」

「いいのよ。腕白でもいいから大きく育ってほしいのよ。」

 要するに地方ロケ、旅行、温泉、グルメ。さらに東京に帰っても高級寿司。これぐらいしないと良い女優さんが渋子の役を引き受けてくれないだろう。

「いいのよ。娘を接待するのは母親の努めよ。オッホッホー!」

 要するに現代ドラマ化してもらうための、美味しいどこどりの監督出演者の接待ドラマである。これで採用率UP。

 つづく。

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