第4話 土の上にも30年 「魔法」の誕生
――まぶしい。
眩い光がさしている。
ここは.....どこだ?
「ここは.....マジでどこだ....!?」
気が付くと不毛の地の上に座っていた。
周りを見渡すが一向に生き物と呼べるものは見当たらない。植物もだ。
どうやら夢ではなく本当に神になったみたいだ。
「あまり実感はないな.....」
手で触った感じ外見に変化は無さそうだが体内からは不思議なエネルギーのような物を2つ感じる。体から湧き上がるような感じの物とそれよりも強力なパワーのような物。恐らく魔力と神としての力なのだろう。
だとすればまずは....
「魔法を使ってみるか.....」
この手の世界の決まりはやはり魔法だろう。レーブもこの世界には魔法があるって言ってたし。
......。
ちょっと待てよ.......
「魔法って....どうやって使うんだ.....!?」
そういえば魔法の使い方とか全く聞いてなかったな。どうすればいいんだこれ?
「炎よ!!」
「ファイアー!!」
「燃えろ!!」
......
「スーパーハイパー......
..............
................
「業火を起こせ!!」
ダメだ。1時間くらいそれっぽい詠唱をしてみたが魔法の「ま」の字も無い。どうすればいいんだ?このままじゃ生命の誕生どころか何も発展しないでこの星が終わるぞ....
そのまま考える事20分。
わかった。そういえばこの星はまだ生命が誕生してないんだったな。
だとすると詠唱とか炎だの水だのを出す以前に魔力(と思われるパワー)をそういう物質に具現化するような「魔法」と呼べるような技術が無いんじゃないのか....?
となればまずは自分で「魔法」の概念を作る必要がある.....?
いやいやいやいや無理でしょ!そもそも前世はただの凡人だし!画面の中の人たちはあくまで空想の範疇に留まってるからすごい魔法を出せるのであってそれを現実世界の住人にやらせようとしたってわかるわけないだろ.....
考え方を変えよう。魔法が使えないなら今度は神としての力を使ってみよう。
そもそも神としての力....長いな。神力(しんりき 日本では超人的な能力の意味ですね)と呼ぶことにしよう。これがあるのかどうかすら怪しいけどな。それであろう力が体から湧いているのは何となくわかるが。
こっちはこっちで具体的に何ができるのかがまずわからんな、これ。
超人的な能力....そうだ。ステータスを見てみよう。餞別に自分の能力が見れるようになるとか言ってたな。
「ステータス!」
.........。
「スキルオープン!」
.............。
またこのパターンか!
何が餞別だよ!嘘つきやがって何も開かないじゃないか.....
.....いや違うな。この世界そもそも何もないからあくまでそういう風に自身の能力を可視化する事ができるってだけであってその概念というか魔法というのか?これを自分で作れってことだな。てっきり神になったって言うから結構気楽に過ごせると思ったんだがやる事が多くないか....?
ふぅ。一回落ち着こう。
とりあえず整理しよう。まずこの世界は
・魔力と呼べるものはあるっぽいが「魔法」が存在しないため使えない
・神力も同じくあるっぽいがこちらは使い方がわからない。
・土地に生命が無い為どうにかして「生き物」を創造する必要がある
・この星の本来の歴史では生命誕生まであと300年
・佐和橋はこの世界で「国」と呼べるものが出来る頃にどこかの生物に魂が宿る
そして今やらなくてはならない事が
・「魔法」という概念を作る事
・神力の使い方を理解する事
・生命を誕生させる事
主にこの3つだな。 にしても何の手がかりもない状況で魔法を作るって無理じゃないか? このままだとあっという間に300年なんか経ってしまうぞ...
それに今何時だ?太陽に位置するであろう星がすこし傾いた所にあるから午後か?
方角がわからないしこの星が地球と同じように自転・公転してるのかすらわからないせいで午前なのか午後なのかすらわからない。わからない事多すぎないか??
まぁわからない事をいくら考えてもしょうがないな。 とりあえずまずは「魔法」の概念を定着させる方法を考えよう。これなら簡単だ。この世界で〇〇というものは○○になるという事である。というのをこの世界に認識させれば恐らく使えるようになるんじゃないだろうか。生命がいないとなるとこの星にいるのは今の所俺だけ。つまりは俺が認識した事がこの星の概念として成り立てば魔力を使って特殊な力を扱うことが出来る....「魔法」を使えるようになる。この可能性はあるな。
だとしたらまずは何の魔法を作ることから考えようか....
とりあえずこの星に何かこう資源とか生き物が本当にいないのかとか見てみる必要があるな。移動手段として空中を飛び回る魔法を作ろう、よしそうしよう。
「飛翔!」
詠唱と同時にジャンプ!
着地。
飛べると思ったがダメか。
いやまだ決めつけるのが早いな。「飛翔」という詠唱に対してそれは空を飛ぶという事であると俺が完全に信じ込むまで続ければ......
「飛翔!」
「飛翔!!」
「飛翔ゥ!!」
......これを延々と繰り返すうちに夜になった。
「ついに日没か....結局飛べなかったが.....少しずつなんというかジャンプした時の飛距離が上がってるような.... とりあえず今はこれを繰り返してみるしかないな。」
....すっかり忘れていたがこの体腹も空かなければ眠くもならない。便利だがちょっと寂しいような気もする。
それから朝になるまでひたすらに「飛翔」と叫び続けた。
―翌朝―
「飛翔!」
ジャンプ。
「よし、昨日より明らかに着地するまでの時間が伸びてる。恐らく俺が実際に自由に飛び回る人間を見たことがないから飛翔=飛び回るに辿り着くのに時間がかかってるんだろうな。」
このままどんどん飛距離を伸ばしていけば最終的に飛べるようになるはず!!
「飛翔!」
ジャンプ。
「飛翔!」
ジャンプ。
そしてこれを繰り返すこと10年。
「飛翔!!」
スッ
体は浮いたまま完全に空中に留まっている。
「......ついに成功した....!?」
そのまま時間が経つも体が落下することはなかった。
「よっしゃあああああ!!!ついに最初の魔法を作るのに成功した!!!」
やっとだ!やっと最初の「魔法」を作るのに成功した!!長かった!もうどれくらい時間が経ったかわからないな....恐らく何年って時が経ってるんだろうな。神としての時間の感覚ってとても短いようだ。とりあえずかなり時間がかかったがやっと終わった....!
「神様ってのはすごいんだな...これを何度も何種類も繰り返して色々な魔法を作ったのだろうか....?」
そう考えると次の課題は色々な魔法を作る事だ。だがその前に.....
「これ浮いたのはいいんだが一体どうやって降りるんだ.....?」
よくよく考えたらジャンプする事しかしてなくてそのまま浮いた後に自由に動くまでをセットにしないと意味が無いんじゃないのか.....??
こうして空中に浮いたまま動き回る方法を模索すること5年。
「よし、何とか重力に逆らって手足を自由に動かせるようにはなった。なんか手足が動くのに浮いたままってのもおかしいけどな....」
そうして手足をバタつかせる事また5年。
「よーし、空中で動き回れるようにはなった。最後はこのまま地面に降りる方法を考えよう。これを全て1セットにして「飛翔」という魔法の完成だな!!」
そして意気揚々に着地方法を模索する事5年。
「降りれた!やっと地上に降りれた!!」
降りるまでが一通りできたからあとは「飛翔」の詠唱で空中に浮く→動き回れる→昇降できる(=着地できる)を同時に出来るようになるまで続ければいいのかな?
「飛翔!」
ジャンプ。
動けない!
..............
動けるようになった!
降りれない!
..................
降りれた!
「飛翔!」
ジャンプ!
宙を動き回る!
着地!
これを馴染ませるように5年続けてようやく....
「飛翔!」
よし、任意で飛んで動き回れる。着地も...
ストン。
できる!
「やっと出来た.....これでちゃんとした飛ぶ魔法の完成だな.....」
これをあと何種類もやらないといけないのだろう。
「とは言ってもいくら体は疲れないといっても心の方がさすがに疲れたな....」
少し休もう......
そのまま地面に横になり、30年振りに眠りについた。
こうしてこの世界に最初の「魔法」が誕生したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます