第3話 現世へ戻るためには

「さて、大々的な言い方をしたけれど実は生き返るためにはいくつか問題がある。最初に話しておくが....君たちを呼び出したときにこちらの世界にはない次元に干渉するような力が流れ込んできたのだ。一人分の力ならまだ影響はないのだが二人分の力が干渉してくると蘇生に成功したとしても君たちの意識は次元の果てに拡散して人格と呼べる物を失ってしまう。どちらにせよ結晶に与えられた力は一つの命しかない。そのため生き返らせるは最終的にどちらかが死ぬまで戦うことになるが....それでも君たちは元の世界へ帰るという覚悟はあるかね?」


レーブの声色が急に怖くなる。


「こんなチンケなヤツの為に死んだんじゃ納得いかねぇよ!さっさと方法を話せ。」


「同じく。生き返れるならできるだけの努力はします。」

元はといえばこいつのせいでこんな目に合っている。最終的に殺すことになるとしても生き返る理由には十分なるだろう。


「よし、それじゃあ話してあげよう。簡単に言ってしまうとこの結晶は生命まるまる一人分のエネルギーを宿している。つまり君たちの魂にこのエネルギーを使うことによってその生命はたちまち蘇る。肉体も元通り。ウソみたいな話だがまぁ本当だ。しかし問題があってな、この結晶は私のいた世界の産物だ。君たち他の世界の住人にこの力を使っても実は効果がないんだ。そこで―」


「話が違うじゃねぇか!」


話を割るように佐和橋が怒鳴り散らす。こいつはいちいち喧嘩腰にならないと人の話を聞くことすらできないのだろうか。


「君、人の話は最後まで聞く癖を付けたまえ。この結晶を使うには君たちが私のいた世界の住人になる必要がある。つまる所この世界で第二の生を過ごし、その後にこの世界に"生きていた"と認識してもらわなければならない。」


「なんだ、簡単な話じゃねぇか。アレか、異世界転生とかいうヤツだな。久賀のヤツが好きでよくそういう本読んでたな。たしかチートじみた能力をもらって敵をちぎっては投げちぎっては投げで女にモテモテになるとか」


久賀(くが)というのは佐和橋とよくつるんでいた同じく不良である。にしても詳しいな。以外にもそういう本を読む趣味があるのだろうか。


「そう浮かれてもいられない。更に問題があってな。君たちは運よく私が魂を存在させているからこの世界で記憶を保持したまま新たな生を授かることができるのだが.....話したとおりこの世界は戦争によってもはや生き物は住んでいない死の星と化してしまった。」


「それじゃあ....どうすれば?」

蘇生の結晶は一人分。この世界で生きた証を残さないと使えない。なのにこの世界はもう生き物がいない。これはさすがに八方塞がりじゃないか。


「そこでだ。私は神"だった"と言っただろう?私は自分の肉体を失うのと引き換えに全ての力を使いこの世界を作り変える事にした。具体的に言うとこの世界に人と魔族が現れるより300年ほど前まで時間を遡らせた。君たちに与えられた選択肢は二つ。この世界へ生まれ転生者となるか、この世界を創造する神となるか、だ。」


どうやら俺は究極の選択を迫られているようだ。転生してこの世界に名を残すような人生を歩むか、神となってこの世界を創造するか......どちらも俺にはムリな気がしてならない。


「なるほど....じゃあ時葉、テメェが神になれ。俺はそういう面倒くせぇのはパスだ。さっさと転生してクソみてぇな死に方を無かった事にしなきゃなんねぇからな。」


以外にも佐和橋は神になる道ではなく転生者として生きる道を選んだ。まぁどっちになったとしても自信がないから先に決めてもらえると助かる。

「じゃあ俺は神になります......」


「うむ。決断が早くてなによりだ。では今から新たな生を与えるがその前に.....神の力で君たちの記憶を見させてもらったよ。君たちの世界ではどうやらこういう異世界に来ると決まってふしぎな四角いボックスの中に地図や自身の能力が見えるようになっていると考えられているらしいな。どうにもそちらの世界のビデオゲームとやらが影響しているのか。」


それは....いわゆるステータスの事か。たしかに異世界に転生するといった創作物のだいたいはそういった物が使えるが....


「餞別と言ってはなんだが新たな世界に君たちの能力をわかりやすく可視化した物をいつでも呼び出せるようにしてあげよう。それから.....サワハシと言ったかな?君にはしばらく眠っていてもらう。この世界に国と呼べるような物が出来上がったころに君の意識は新たな人生として目覚める。それまでの長い間はトキワ君、君が頑張って世界を作り上げるのだ。さて、全てが終わったころに生き残ったどちらかが再びここへ来るのを楽しみにしているよ。私はすでに肉体を失っているが故にこの"魂の箱庭"で君たちを待つことにする。それではトキワ君とサワハシ君。これから果てしなく長い君たちの物語が始まる。心して臨みたまえ!!」



レーブの光がますます強くなり、視界が見えなくなる―――

こうして俺は、元の世界へ帰るべく新たな異世界の"神"として生まれ変わることとなった。

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