第10話、紅キ姿

「ゴフッ…」


目の前で口から血を流すリーサの両足を更に無数の木の根が巻きついていく。




この術は対象が死んでもなお、巻きついて離さない。


やがて地中に引きずり込み木の一部として永遠と眠り続けることになる。




リーサ、それが魔王として私達を欺いた貴方の最期です。




私が心の中でそう言ったときだった。


背後から殺気を感じ、すぐさま身体を翻し、後方へと跳び退く。



そして、目の前の殺気を放った相手を視認し、アルクは愕然とする。



目の前に居るのは、リーサだった。



後方で、矢が突き刺さった筈のリーサとは別にリーサがいる。


目の前のリーサは、傷も衣服の汚れもない。

彼女が手にしている剣も血が滴ってはいなかった。



「ありえない‥」


私はそう言いながら、もう一度「大地の加護を我に」と唱えた。


リーサが私の目の前に居る理由は解らず、現に後ろには彼女の死体だってある。


だが、彼女が新たに私の所に現れても、もう一度彼女を殺した魔術を発動すれば良いだけのこと‥


しかし、リーサの足は止まることがなく、そのまま彼女の間合い。


「なんで‥なんで‥なんで‥‥」


焦る私の頭の中はもう何も考えれなくなっていた。


「大地の加護を我に」


私の一族に伝わる魔術。


今まで何度も私を救ってきたこの魔術キセキ


だが、魔術は発動することなく、そのままリーサの剣は私の両腕を両断した。


「イャアアアアアアアアィィィィ」


稲妻が走ったかのような痛みがアルクの全身を駆け巡っていく。


腕は宙を舞。

血は溢れ出す。


アルクは目の前の自分の返り血で濡れた悪魔を睨む。

「ッ‥コロス‥‥オマエハ‥コロ‥」



ズンッ。


アルクを黙らせるような心臓への一突き。


「ウッ‥‥」


その瞬間アルクが喋ることはなくなった。

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