第9話、紅キ剣ト翠ノ弓
「リーサ。何故マオを殺したのです?」
間合いを保ちつつ、アルクは目の前の鮮血に身を染めた仲間に問う。
「なんで?なんでってそりゃあだって空間魔術(テレポーテーション)で逃げられたら面倒じゃん」
自分の得物に滴る血をペロリと舐めながら、目の前の少女はニタニタと笑う。
「リーサ。あなたは魔王の仲間だったのですか?」
アルクの問いにリーサはキョトンとした表情で面食らった後、ッハ、アハハハハと笑い始めた。
アルクはその笑いの意味が解らず、不快でしかないという表情を浮かべる。
「何が可笑しいのですか!!」
苛立ちを抑えきれず放った怒声に対し、リーサは小声で「だって」と呟きだした。
「だって…だって…だって…だって…だって…あたしは魔王の仲間じゃないし」
「まさか……貴方が…」
アルクの問いに目の前の少女はニヤリと口を歪ませる。
「アハッ、やっと気づいた。ホント、良いパーティーだったよ。最後まで愉しませてくれるなんて」
ヒュン。
瞬間、リーサの頬を矢がかすめた。
ツー、と頰から赤い血が滴る。
「次は心臓を狙います」
アルクは、そう言ってすぐさま次の矢を装填する。
「ったく、まさかあたしに勝てると思ってんの。マオも言ってたじゃん、あたし相手だと魔術が使えないって」
そう、確かにあのときマオは空間魔術(テレポーテーション)を発動することが出来なかった。
しかし、あのときと今とでは状況が3つ違います。
1つ。
リーサの身体にマオが接触していた。
2つ
リーサの紅い剣に切られた。
3つ
マオが瀕死の状態だった。
1つ目の対象の身体に触れたときにのみ効果が発動するものはいくらでもありますし、2つ目の対象を切ったときに効果を発動するのが、あの紅い剣の能力なら充分にありえます。
3つ目は、魔術と生命の源である心臓が傷ついていたのなら魔力が使えなくても当然です。
私の予想が当たっているなら…
そう言ってアルクは、リーサの心臓目掛け矢を放った。
先程と違い、アルクの動きを警戒していたリーサにとってただ直線に向かってくる矢なのど避けるのは容易い。
しかし跳びのこうとした瞬間、「大地の加護を我に」と唱えた。
アルクの詠唱に鼓動するようにリーサの足元から地面を裂き、無数の木の根が両足を絡め動きを封じる。
「ヤバッ」
リーサがそう思った瞬間、ダンッ。
矢はリーサの心臓へと突き刺さり、白いカーディガンは赤く滲んでいく。
「予想通り、近づきさえしなければ魔術は発動出来ますね」
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