第8話、翠ノ弓ノ夜
ぎりっと歯をくいしばる。
魔獣の気配?
それも軽く気配を探ってもざっと50はくだらないでしょう。
最初は、何故この村にそれほどの数の魔獣が居るのかと不思議に思った。
ただ、それ以上に不可解なのは魔獣の存在そのもの。
魔獣というのは、魔王の使い魔であり、言い換えれば魔王の魔力で動いている。
つまり、魔獣が存在していると言うこと=イコール魔王が存在しているという可能性が最も高いということ。
魔王がまだ生きている!!
そう認識した瞬間、全身の血が熱を帯び、頭は黒い泥を被ったように苛立ちと憎悪で塗り固められた。
「マオ。あなたは、宿へ行ってリーサとコーイチを空間魔術テレポーテーションで村の中央に連れてきて下さい。その間に私は村人を村の中央に避難させます」
「分かった」
マオがそう言って頷いたとき、前方で叫び声が聞こえた。
「二人とも、大変だ!!魔獣が出やがった」
そう叫びながらリーサは私服姿のまま右手に剣を携えてこちらに駆け寄って来る。
「ええ、相当な数がこの村を囲むように集まっています。
ですから、村人を中央にしてその4方向に私達4人を配置して戦いましょう」
リーサは頷きながら、
「そうだな。けど4人で戦うのはムリだろ……
だって今から死ぬんだぜお前ら」
そう言ってリーサの剣はマオの身体を貫いた。
赤い血が私の目の前に広がる。
「えっ‥‥」
それは私とマオ、どちらが言ったのだろうか。
もしかしたら2人共、声を漏らしたのかもしれない。
「マオ!!」
私がそう叫ぶとマオは、リーサの腕を掴んだ。
「どうせ、うっ、死ぬなら道連れです」
マオの得意な術である空間魔術テレポーテーション。
おそらく崖、もしくは空中に移動してリーサと転落死するつもりだったのだろう。
しかし、マオの空間魔術(テレポーテーション)は発動せず、マオとリーサが移動することはなかった。
「そんな……魔術が発動出来ないなんて……」
マオが力なくリーサの腕を離す。
その瞬間リーサはマオを貫いた剣を引き抜く。
マオの腹部からは大量の血が流れ、そのままマオは力なく倒れた。
そして、すかさずマオの首めがけ剣を奔らせるリーサ。
たが、その瞬間後ろへと跳び退くと、リーサの目の前を矢が凄まじい速度で通過した。
4メートル程の間合い。
紅い剣を構えた金髪の少女と翠の弓を構えたエルフが互いを睨み合った。
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