第4話、夜ノ宴
空も暗くなった頃、村では魔王討伐を祝い宴会が始まっていた。
明日は王国で色々するらしいし、はっきり言って憂鬱だ。
なぜなら俺には、魔王を倒したって記憶がないから‥
誰かに褒められるのは嬉しいけど、俺にはその資格がない。
「勇者のお兄ちゃん、食べないの?」
村の子供が、宴会の端っこで料理を持ったまま佇んでいる俺を不思議そうに見ながら、聞いてきた。
「お兄ちゃん、もうお腹いっぱいなんだ」
そう言って腹を擦る。
「ふーん」
そう言って子供たちは、料理が並べられたテーブルへと走っていった。
「おいおい、それっぽっちでいいのかよ」
さっきまでの鎧に身を纏った姿と違い、黒いトップスの上にグレーのカーディガンを羽織り下は白いスカート、肩までかかる金髪、赤みがかかった頬。
その姿はとても印象的だった。
あと、その右手にある骨付き肉と左手にある酒の入ったジョッキも。
「英雄がそんなしけたツラしてんなよ」
ほらよ、と飲みかけの酒を顔の辺りにズイっと持って来られる。
「いや、いらな」
いらないと言う前に口に酒を押し込まれていた。
「ぐふっ」
なっ、なんだこの変な味、苦いというか不味いというか‥‥なんかクラクラする‥‥‥‥バタン。
「‥‥ん」
なんか頭が痛い。
ぼーっと霞む視界が次第に明確になっていく。
視界には、真っ先にリーサが入った。その背景に夜の星星と一際強く光る月が観える。
そして、俺は仰向けになってて頭には柔らかくて心地良い感触が‥ってこれ膝枕じゃね。
「おっ、起きたなコーイチ」
「おっ、おう」
なっ、なんかめっちゃ恥ずいんだけど、えっ、なっ‥なんでこんなことになってんの?
「あー、その悪かったな。まさか酒一口飲んだだけで倒れるとは思わなくて‥」
バツが悪そうに頭を右手で掻きながら苦笑いするリーサ。
あー、思い出した。
酒飲まされて、一口でダウンしたんだった。
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