ギルバード様と剣術大会に出席しよう!
冒険者学園の入学試験が終わり、合格通知を受け取った私たち。首席は当然の如く、優れた知性と魔法をお持ちのギルバード様だった。私はギリギリ特例制度の枠に入れたようで入学金も授業料も免除になった。
それもこれも魔法や剣術を教えてくださったギルバード様のおかげ!!ちゃんとエッテルニヒ公爵夫人様にご報告させて頂きました!
『もうそこまでメカケに教え込んで自分色に染め上げているとはさすが我が息子!』って喜んでいらっしゃったなあ!!いいことした!!
いつものようにエッテルニヒ家のお屋敷の中庭でセバスチャンさんと剣術の特訓をしているとギルバード様が一通の手紙を見せてくれた。
真っ白の封筒に真っ赤な封蝋のそれを受け取って中を読む。とっても綺麗な文字と葉っぱの絵が書かれた便箋だった。
『拝啓、ギルバード・エッテルニヒ様へ
この度剣術大会を開催する運びとなりました。つきましては
ご友人の方にもご参加頂くことも可能ですので奮ってご応募ください。剣術大会実行委員会より』
手紙の内容を読み上げるとギルバード様がとある提案をしてくださった。
「剣術の練習も兼ねて良ければエミリアも参加しないか?セバスチャンとの練習だけではつまらないと思うんだけど、どうかな?」
「いいんですかッ!是非是非ッ!!」
「そうか、じゃあエントリーしておこう」
ギルバード様がインク壺にペン先を浸し、サラサラと紙に私の名前と自身の名前を記入していく。慣れた手つきで封蝋を済ませ、使用人のアリシアさんに渡す。
アリシアさんが丁寧な手つきで手紙を受け取ると小さくお辞儀しながら屋敷の中に戻っていった。
「剣術大会は明日やるそうだ。あんまりはしゃいで特訓しすぎて怪我するなよ?」
「はい、気をつけますねギルバード様!」
そう返事を返すとギルバード様は安心したように頷いて屋敷の中に戻っていった。
「では今日は軽く手合わせする程度に納めておきましょう」
「ありがとうございます!セバスチャンさん!」
セバスチャンさんの言う通り、軽く千本勝負程度に納め、その日は早く家に帰って準備した。
◇◆◇◆
次の日、ギルバード様と一緒に剣術大会の会場に向かった。なんでもギルバード様のお兄さんのアルベシード様が闘技場を貸し切って開くらしい。
「いいか、アルベシードお兄さんは次期国王の王太子なんだ。くれぐれも粗相がないようにするんだぞ」
「はい!話しかけられるまで頭は下げる、ですね!」
「よく分かってるじゃないか!……おっと、来たな」
いつも背筋のいいギルバード様が更にビシッと姿勢を良くする。慌てて私も頭を下げ、視線を地面に落とした。
ザッザッと足音が近づき、ギルバード様の前で立ち止まる。
「来てくれて感謝するよ、ギルバード。活躍を期待しているぞ」
「お招き頂きありがとうございます、アルベシード兄さん。ご期待に添えるよう頑張ります」
アルベシード様の足が動いて爪先が私の方に向いた。ごくりと唾を飲み込んでアルベシード様の言葉を待つ。
「こちらのお嬢さんは君の従者かい?」
「僕のメカケのエミリアです。エミリア、ご挨拶を」
「ギルバード様のメカケのエミリアです。以後お見知り置きを」
ちょいとワンピースの端を持ち上げながら挨拶をする。顔を上げるとアルベシード様が興味深そうに私を見つめていた。
「ほ、ほえ〜。妾かあ〜。そっかあ〜!ああ、私の名前はアルベシード、ギルバードの兄です。今日は来てくれてありがとう」
アルベシード様の丁寧な自己紹介に頭を下げる。その後、決闘でのギルバード様の活躍を拝聴したり、大会で優勝者は誰になるかという話で盛り上がったりしていた。ギルバード様は謙遜してアルベシード様が優勝すると仰った。
勿論、私はギルバード様が優勝すると確信している!!
「おや、そろそろ開会式が始まりますね。では、ここら辺で失礼します」
沢山の従者を連れながら立ち去るアルベシード様。見るからに剣士や格闘家の人たちも続々と会場に入ってきた。
「参加者は……こっちだな。はぐれるなよ」
「はい!ピッタリ後ろについていきます!」
人でごった返すなか、ギルバード様を見失わないようについていく。参加者以外立ち入り禁止と書かれた通路を抜け、闘技場の中央に出る。
「うん、五分前に着いた。バッチリだ」
満足げに頷くギルバード様。五分前行動ができるなんて、ギルバード様はなんて凄いお方なんだろう!!
いっつもギリギリ二分前行動の私も見習わないと!!
「おい、あいつが噂の没落王子か?」
「女連れかよ……気に食わねぇ。試合でぶちのめしてやる……」
ヒソヒソと囁く声が聞こえた。視線を向けると皮鎧を身につけた男達が私たちを見ていた。
なんか、嫌なヤツらだな。パッと見た感じ強い訳じゃない。セバスチャンさんが言ってた『体だけ鍛えておけば強くなれる』という目をしている。
ギルバード様も視線に気付いたようで眉を顰めていた。注意しようとするとギルバード様に窘められた。
「いいんだ、エミリア。ああいう奴等は口で言っても聞かない。それよりも始まるぞ」
ギルバード様が視線を向けると、アルベシード様が部下を連れて壇上に上がってきたところだった。
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