そんなところも好き

 わがままだな、女って。


 オレのセーコはわがままだ。


 名目上の恋人とはいえ、オレがこれだけ努力して合わせているのに、かわいくない。



 女ってこんなに不可解なのか――そう思って、すぐさまセーコの友人に相談したが、逆にセーコとぎくしゃくしてしまった。


 わからないものだ。


 セーコが怒りくるってることはわかっていたから、友人たちに言ったら、少し距離を置くべきだと主張された。頭を冷やすはずだからと。



 たかだか、カエルの卵だぜ。そんな怒ることないだろ。


 オレはそう思っていたから――しかもちゃんと謝ったのに――いつまでも腹を立てている彼女に、心底あきれた。なんて、しつこいのだと。


 ミッちゃんに、女ってものがどんなものなのか、教えてあげなきゃなんないのに……もっと女の研究しなきゃダメだな。


(セーコは参考にならない。永遠の謎だ)


 そう思って、オレはクレンジングオイルをコットンにとった。


 オレの、大森拓人の仮面が、はがれていく。



 ミッちゃん、オレ、男としてパーフェクトだと思うんだ。女の気持ちがわかったら、よりパーフェクトなんだと思う。


 だから、オレは女になって、ミッちゃんに「女同士」っていうのを味合わせてやる。


 今は「男同士」だけどな。



 ピンポーン!


 その時、玄関のチャイムが鳴った。兄きだろう。



「なんで自分ちなのに、ピンポン鳴らすの。入ってこいよ、ふつうに」


「ミユが着替えてたら、悪いと思って」



 キショッ。


 同じ男同士でも、ミッちゃんとは大違いだな。


 そんなに弟を意識すんなよ。キモ。



 まあ、オレ、かわいいからな。仕方なし。


 オレ、思いっきり兄きを馬鹿にして、上目遣いで見る。



「ねぇ、お兄ちゃん」


「あ、なんだ。なんでも言ってみろ」


「ブリーチして。頭、プリンになっちゃう」



 甘えるのが、コツ。

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