ブルーなの

 美智子ちゃんと出会った、そんな次の日の月曜日。


 うーん、ブルーマンデイ。


 ちょっと憂鬱。



 だから、美智子ちゃんが教室にいなくて、私的にはけっこうだった。



「えっと――昨日は何ともなさそうに見えたけどなー、美智子ちゃん」



 これで思う存分、うわさ話に興じることができる。


 こう考えてた私、キミちゃんとにゃっこの両方から、急に――まるでつかみかからんばかりに、ぐっと迫られた。



「えっ。日曜日に、セーコちゃん、美智子ちゃんに会ってたのっ」


「セーコ、詳しく聞かせてよっ」



 な、なんでそう、集中するのかな。


 まあ、いいけど。


 私は淡々と話してしまう――と――と。なにやら。



『愛人契約』なる単語が、二人の口からささやかれ、目を丸くしてしまう私。



「「やっぱりねえ……」」



 二人とも、もの思わし気にうなずきつつ、美智子ちゃんの机のほうを見た。


 え――えっ。なにその話。初耳だから、もうちょっとゆっくり聞かせてちょうだいっ。


 言おうとしたとき。



「男子――着替えるから出て――」



 B組の女子が声をあげながら、A組教室に入ってきた。


 次はB組との合同体育だ。


 女子はスカートの下からスウェットをはき、ジャンパースカートの制服を脱いでしまう。



 さすがに、まだ居残ってる男子はいないから、ブラウスもはだけちゃう。


 そのとき、遅れてきた美智子ちゃんが、A組教室の戸を、こう、何気ない風に、すっと開けた。


 先に着替え終えてたクラスの女子たちが、どんっとその肩にぶつかって、で、謝りもせず出て行った。



 それをキミちゃんとにゃっこが見ていたらしいんだけど、私はブラのワイヤーがくいこんでくるので、もじもじと下を向いていた。


 これもう、かえなきゃ。でも、お母さん、ブラ買ってくれるかなあ……この頃、お手伝い、あんまりしてない。



 私はブラジャーを一つしか持ってない。安売りのB。


 なんとなれば、両親が華燭かしょくを嫌うので。


 ていうか、娘が色気づくのを嫌うので。



 だから、あわてて――遅れると体育の授業、マイナスポイントがつくから――着替えだす美智子ちゃんの方を振り向いて、はっとした。


 白いブラウスの下――この学校、下着には寛容だ――淡いパールピンクのキャミソールの脇から、光沢のある赤紫色がわずかにのぞいていた。


 嫌――あんなの、中学生がつける下着じゃ――ない。変。


 生理的に拒絶反応が起こるのを、私は止められなかった。



「セーコ、先、行っちゃうよ――」


「あ、まっ、待って――」



 私は教室を後にしながら、妙に高鳴る胸を抑えつけた。

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