第23話 みっちゃん②
最初に見たのはバルコニー。とは言っても俺の家のバルコニーとは違い、物干し材など無く、プランターが並び、真ん中にステンドグラス調の天板が乗ったテーブルがあった。
「リビングで視線を感じて振り向いたら、ここに人影が見えたんですね」
試しに下を覗くが、ここは10階。人がよじ登るのは不可能だ。
「おっしゃれぇ。夜景も綺麗ですぅ」
観光気分の光永を無視して、俺は洗面所へ向かう。
「ここが、よく見る所ですか」
ホテルの洗面所のように整頓された綺麗な洗面所には、水アカの1つも付いていない大きな鏡がある。
「何時頃によく見るとか、ありますぅ?」
光永は指におかっぱの髪をクルクルと巻き付けながら、鏡に映る自分の姿を堪能していた。
「そう言えば、23時頃が多いかも」
首を傾げながら朝霧が答えると、光永はニッコリと笑みを浮かべる。
「じゃ、みっちゃんも23時まで居ていいですかぁ?」
いやいや、まだ4時間くらいあるぞ。こいつ、居座るつもりか。
「まぁ、明日は休みなんで、解決してくれるならいいですけど」
「やったぁ!朝霧ちゃん、わたし、張り切って晩御飯作っちゃいます!」
「え?!」
俺と朝霧を放ったらかしにし、光永はキッチンへと向かう。
「あの人、本当に霊媒師なんですか?」
洗面所に残された俺に、朝霧が怪訝そうな表情で聞いた。
「そう、らしいです」
「伊藤さんが言うなら信じますが、あまりお会いした事ないキャラなんで、ちょっと不安です」
俺も不安だっつーの。そんな事は言えないので、朝霧に失礼がある事を事前に詫び、寝室へと移動する。
「ここが、もう一つのポイントですね」
「寝てる時に、胸が苦しくて目が覚めると、何かがいる事があるんです」
シワひとつないベッドメイキングされた大きなベッド。こんなベッドで一度寝てみたいもんだ。
「特に、気になる物はありますか?例えば、幽霊が出始めた時期に買った物があるとか」
「いや、無いと思います」
俺はスマホを取り出し、秘密兵器のアプリを起動させると、朝霧が覗き込んできた。
「何ですか?それ?」
「簡易の幽霊探知機です。どれくらい当てになるかは、僕も分かりませんが」
幽霊探知機は反応しない。となると、今ここには幽霊がいないと言う事か。
「後は、玄関だったり、書斎だったりですね」
「はい」
一定の場所に出現しないという事は、この家自体に幽霊が住み着いているのだろうか。
「他の家で幽霊が出るとか聞いた事は?」
「ないです。というか、そんな話になった事が無いです」
ですよね。新築マンションで、そんな会話が出る気はしないですし。
「ご飯、出来ましたよぅ」
すっかり忘れていた光永が、リビングから甲高い声をあげた。
「光永さん、案外、手際がいいんですね」
「そのようですね」
不安を膨らませながら、俺たちはリビングへと向かった。
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