ぬるい風

自転車に乗るのは好きだ。風の流れが肺の中を綺麗に洗い上げてくれるようでとても心地が良い。

近くの大通り沿いにあるドラッグストアまでは、田舎道を通れば二十分とかからなかった。

自転車を関係者入り口の側にとめると、私の好きな足音が聞こえた。

「おはよう、バイトちゃん」

自信のある 凛とした 背筋の伸びた 長く美しい黒髪を結えた 私の好きなバイト先の先輩の足音だ。

振り向けば そこには短髪の美女が半笑いで待ち受けていた。

「おはようございまァ?」

「まぁ…」

思わず素っ頓狂な声を上げたわたしに、先輩は口元に手をやると優雅に微笑んで見せた。

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