首振り扇風機ちゃん、卓上扇風機ちゃん

 なぜ今夏の冷房にもだえていたかといえば、今の部屋に越してきたのが昨年の秋だからである。越してきたばかりの頃はクーラーの調子が悪く、たまに訪れる暑さを扇風機でしのいでいた。しかし今年になってからは誰も扇風機ちゃんに見向きもしない。彼女は部屋の隅っこに、ぽつんと立っている。


 私は扇風機の首振り機能が好きである。外から戻ってきたとき、一気に体を冷やしたいときは一点集中させる。長時間風を直接浴びていると逆に寒くなってしまうので、首振り機能で風が当たらない時間を作るとストレスにならない。

 一人で残業するときはクーラーを止めて、扇風機ちゃんに働いてもらうことにした。自分一人でなくても、自分含めて二、三人ぐらいであれば周りの許可を得て扇風機ちゃんを出勤させてみた。

 クーラーと扇風機の両方をつけるといい、ということは様々なメディアで特集されるぐらい周知のことであると思うが、我が職場はクーラーくんの独壇場のままであった。


『首振り扇風機ちゃん』


徐々にホコリをかぶってくるのがむなしい。

気に留める人も掃除する人もいないのだ。




『卓上扇風機ちゃん』


 最後に彼女について語って、半年にも渡った闘いの記録を締めようと思う。

 秋を感じ始め、なぜかは知らないが、施設全体管理の暖房が動き始めてから彼女の本領は発揮された。

 最高気温と最低気温が10℃ぐらい離れていた10月。思えば冷房がつき始めたのもほぼ同じ気温の5月であったか。そりゃあ暖房で暑く感じるわけだ。


 ミニ扇風機ちゃんは日中まだまだ暑い時季に舞い降りた天使であった。

 クーラーくんも冷房で働いてくれているが、設定温度に達していないがために役に立たない。むしろたまに突風で体が震えるので、ふいうちはやめてほしい。

 首振り扇風機ちゃんには今年活躍の機会を与えられなかった。

 卓上扇風機ちゃん。風が冷たいために寒く感じることもあるとはいえ、屋内勤務にとってはまだ暑さが残る季節。なぜ暖房がついているのだろうとぶつくさしながらも彼女が涼しい風を送ってくれる。暖房に酔って気持ち悪くなったときでも、彼女のおかげで体調を取り戻すことができる。さらには小さいので持ち運びも簡単である。机の上の狭いスペースにも置くことができる。


 ここにきて手の平返しか、と思う方もいるかもしれない。

 時と場に応じて求めるものを変えるのは、環境に対応するために必要であったのだ。


 クーラーくん、きみは冷たかった。

 でもそれは決してきみだけのせいではないことを、私は知っている。


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クーラーくんは冷たい 楠楊つばき @kurikuri

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