優先順位(前編・靴)
屋外は暑く、屋内は涼しい。あなたはどちらを基準に衣類を選ぶであろうか。
屋内は涼しいを通り越して寒いと感じる日もある。夏はカーディガンといった羽織りものを常備する人もいるであろう。
冷房を長時間耐えなくてはならない環境も配慮されるようになってきた。例えば映画館のひざ掛けに、電車の弱冷房車。どちらも周りに配慮して、体をほぼ動かせない状態が続く。
さらに映画館の指定席が冷房のあたる席であった場合、いつ解放されるのか、しきりに時間を気にするようになる。映画に集中できる余裕はない。
筋肉量や基礎代謝の違いで、他の人よりも寒さを感じやすい自覚はある。だからといって何も対策せずに冷房の中に飛び込むほど命知らずではない。
夏は暑い。大事なことだからもう一度言おう。夏は暑くて寒い。あれ……?
『靴』
真冬に買った靴は蒸れやすいので、ある日夏用の靴を買うことにした。
腰痛持ちにとってヒールは天敵。そのため、ぺたんこのパンプスに決めた。スニーカーのように走れるパンプス、という
ロッカーで
軽やかな足取りで職場に着けば、いつもと変わらぬ極寒ぶりに、天にも昇る心地が地面にめり込むほど急降下した。まあそれもいつものことである。毎回気にしていたら、はげてしまう。
寒いとわめきながら冷房のリモコンを連打したいところであるが、すまし顔で着席した。
足元の寒気に気付いたのは、しばらくたってからであった。
パンプスは靴の甲が開いているため、空気に触れる部分も増えてしまう。足首が寒いせいか、足のつま先が冷えて痛くなった。ひざ掛けをかけ、足首と足首をクロスさせる。密着させることで、冷気にさらされる部分を少しでも減らそうと試みた。
他にも夏用の薄手のストッキングから冬用のタイツに戻した。隣に座る女性のベージュストッキングが視界に入るたびに、寒くないのか気になってしまった。本当に同じ空間にいるのか、実は私だけ異次元にいるのではと心配になった。
タイツの毛玉が処理できていなかったり、洗濯が間に合わなかったりしたときはストッキングの上に冬用のレッグウォーマーを履いた。椅子に座りながらレッグウォーマーを脱ぐのは手間なので、外に出るときも履いたままである。すると足が熱い。タイツもレッグウォーマーも日光を受けてじりじりする。炎天下でも脱がなかったので、事情を知らない通行人はさぞかし驚いただろう。
これまで明言していなかったが、制服はスカートである。そのためズボンを履けという指摘は見当違いである。私は夏も冬もズボンを履きたいと思っている。しかし制服は職種の証明でもあるため、一人だけ違うものとなると、余程のことがなければ難しい。
私がいかに重装備をしようと、隣の女性は薄手のストッキング。同じ空間でタイツを履いているのは私だけ。
一人だけ厚着なのは冷え性の宿命なのだろうか。なりたくてなったわけでもないのに。
厚手のタイツ、ひざ掛け、カーディガンの三つでも太刀打ちできないときは衣服に貼るカイロを使った。これがとても温かい。ただし夏にはほとんど売っておらず、冬のあまりしかないため無駄遣いできない。
夏が終わるまで、発熱インナーは着ないと決めていた。そんなもの着ていたら外に出た瞬間に干からびてしまう。熱中症で倒れた後、『夏なのにそんなものを着ていたせいだ』と責められるまで簡単に想像できた。
快適さは健康につながる。かけた金額には目をそらした。
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