第6話

「買ってしまった……」


 自室で異様な存在感を放つそれをまじまじと見る。衝動買いなんて生まれて初めてだった。だからかは分からないけど、未だに心臓がドキドキしている。


 落ち着かない手つきでそっと財布の中身を確認する。何度見ても万札は一枚もない。


 まさか十万きっかり使うことになるとは思いもしなかった。キーボードってスゲー高いのな……。何ならアンプとかスタンドとかその他諸々含めると少しオーバーしていた。おっさん(店員)が少し負けてくれたのだ。ありがとうおっさん、俺はこの買い物を一生忘れやしないよ……。


「まっ、何はともあれ」


 今日はもうやることやってさっさと寝るとしよう。色んな意味で刺激が強すぎる一日だったから恐ろしく眠い。そのはずなのに、それでも寝付けないんじゃなかろうかと内心不安になっている俺がいる。そしたらそれは間違いなく黒木場先輩のせいだ……。

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