天に吠える狼少女(5/5)
「てめぇら……」
族長としての
「次の族長は、てめぇらで決めな。じ、自分達が、一番信用できると、思うやつを、選べ……ただ、なるべく、人間とよろしくやれるやつを選べ。こ、これからは、人間と共に、生きていくことになる……」
今日、この集落の存在は多くの人間に知られてしまった。知った人間が全滅しているとしても、彼らが帰らなければそれを
だが、今この場には勇者がいる。彼女の手をとることが、おそらく最善の選択肢。
「ほんとに……ほんとにもう、どうしようもないんか――!」
「ありがとよ……勇者の
自分がもっと強い力を持っていたなら、救えたのか。だが、それを口にしていったい何の意味があるだろう。無力である
その小さな肩を、立ち上がって
「ユウ、行きましょう」
ここから先は、ユウが目にするにはいささか刺激が強すぎる。ただでさえ今日は、すでに何人もの人間が一瞬で殺される
だが今日という日は彼女を大きく成長させるだろう。この世界は、こうも
失うことで人は強くなる。
「ディナ……親父の
「そんなこと……!できねぇよ……!」
「で、できるさ……あの技なら……」
「そういうこと、言ってんじゃねぇよッ!!」
涙で
「……てめぇは、自分の娘に、親殺しの罪を
「ばぁか。て……てめぇにゃあ、俺は殺せねぇよ。俺は、上位魔族と戦って、勝って、死ぬんだ……どうだ……最高に、カッコイイ、さい、ご……だろうが……」
肉に
全身を
――娘に見せる
「そんなぶくぶくになっちまって……ちっともかっこよくねぇよ……くそ親父が……」
ディナが服の
例えそれが切れたとしても、二人の
「ディナ」
レイが声をかける。彼の剣と技量ならば、一息に首を落すことができる。苦痛を感じる
だがディナは首を振った。
「――いい。このクソ親父に一発かませられる
「が、がぁはっはっは!そ、そいつぁ……いい。やってみな、馬鹿娘……」
そうして、ディナは構えた。
半身になり、左手を前へ。右手を引き
「ふぅー……」
細く、長く、息を吐く。乱れた呼吸を落ち着かせていく。体内の魔力を
グルルルルル――……
高めた魔力を、全て右手へ。質量を持たぬエネルギーを
爆発する、
長時間の集中と、
だからこそ、その
苦痛は決して与えない。一撃で、終わらせる。
「悪くねぇ、気分ダ……娘に
「――ッ!」
一瞬、
言いたい事が山ほどある。声がデカくてうるさいとか、近寄ると体臭が
――今まで育ててくれて、ありがとう、とか。
その全てを、この一撃に込める。
「
突き出された右腕から超高圧の魔力の塊が手の平を通して直接、テヴォの頭部へと押し付けられる。極限にまで圧縮された
そう、まさしく、爆発だ。
パァンッ
ぐらりと肉の塊が
「――“ありがとよ”、だと……?
父親の血液や
「……………」
レイは
背後からばしゃりという水音。ディナが父から流れ出た血溜まりに座り込んだ音。
「うう、ああああぁ――」
直後に聴こえてくる
レイは歩いて遠ざかっているというのに、その
「あああああああぁあああああああッ!!」
「うあああああああ、あ、ああぁッ!!」
その涙を、その
ディナは
彼女の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます