天に吠える狼少女(4/5)
ドクン、と。
見えない波がユウを中心に広がっていった。それはその時、その瞬間に世界が変わったことを示す
世界が波打つ。その
レイが
折り
「親父……」
おずおずとディナが歩み寄った。
「親父……親父……ッ!!」
すぐ触れられるほどディナが近づいた瞬間、ビクンとその巨体が動いた。レイや他の
「う、おお大声出すなィ……ギ、き、聴こえてラァ……最初か、かかから、ずっと、な……」
肉に埋まった
テヴォの意識が戻ったのだ。
「「族長オオッ!!」」
周囲の
ユウの力によって、
涙ぐんでいることを
「なんだよ。聞こえてんなら、ちゃんと返事しろよ。クソ親父……!」
「ぐ、ガ、ハハハ……だ、だぁれが、クソ親父だ、ば、馬鹿娘……そんなだから、へ、返事する気が、失せたんだ」
いつも通りのやりとり。心の底から楽しそうな、親子の会話。愛情の
「感動の再開……再開?のところ悪いけど、長々と話してる
近寄っても安全であることを確認したセラがさっそくその
正直、見込みは
それでも、限りなく
だが――
「よしなぃ……ま、魔法師の姉ちゃん……」
頭上から降ってきた
「お、オ、俺は、もう、ダメだ……いつ、また、意識が飛んで、暴れちまうかかか、分からねぇ……」
「親父!何言ってんだよ!てめぇ、
必死に
だが、止めた。
「か、
全身が異常な再生力によって
「分かるんだ……次、意識がとんだら、も、もう戻れねぇ……ただ、痛みに暴れるだけの……肉の塊になっちまう……そ、そうなる前に……お、おレを……」
「嘘だ……やめろ!それ以上言うなッ!!」
次に
それを機に重苦しい沈黙が降りた。
誰も、かける言葉が見つからなかった。ユウでさえ、どうすればいいか分からず、何を言えばいいか分からず、一度口を開けたが何も言わずに閉じてしまった。
これから元に戻す方法を探す、そんな
ボコリと肉が泡立つ。その様を見て耐えろなど、誰が言えようか。
だから、これが
「ディナよぉ……」
その沈黙の中、父親は語る。
「て、てめぇを森の中で見つけた時、さ、最初は……そのまま放っておこうと、お、思ったのさ……でもよぉ、あんまりお前が、わんわん泣くから……でけぇ声で生きたい生きたいって泣くもんだからヨォ……魔が差して、
テヴォには妻も実の子もいない。魔族領から人間領へと逃走している最中、
何より、憎んだところで
失われる
手を差し伸べたのは、自然に反することだったのだろうか。
「顔の形もちげぇ、毛も生えてねぇ……だってのによぉ……日に日に、
言葉を発するのも
「い、今では、本当に、てめぇの娘ダと、思ってる……。娘のために、親が
「――なんで、なんで今そんなこと言うんだよぉ!?それじゃまるで、まるで……!」
その先をディナは言えなかった。言いたくなかった。
だが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます