天に吠える狼少女(2/5)
「絶対……今絶対って言ったな!?」
妙な言葉に反応したユウにレイは
「絶対に無理、ありえへん……やったら、勇者であるうちやったらなんとかできるんやないか!?」
「ユウ……あなた何を……」
いまだ
「うちの勇者としての力は、“
望んでなったわけではないが、ユウは彼女なりに勇者というものに真剣に向き合おうとしていた。今では世界を救うこと、それを人間と魔族の
そして、辿り着いたのだ。
「――うちは、
それが彼女の行きついた答え。それが彼女の魔法。
世界を救う、無限の可能性――
それが本当だとしても。
「……もし本当にそうだとして、族長を元に戻せるわけじゃない。セルフィリア
セラの
「分かっとる。でも、あの暴れるのを止められたら元に戻す方法を探せるんやないか。少なくとも、多少の時間
彼女の
「暴走を止められたとして、いつかは必ず肉体は
低い、ではなく無理だろうとセラは思った。確かに暴走していない状態でその
「そうかもしれん。そうかもしれんけど……!このまま何もせんと
できるかできないか、ではない。全てを
「――あたしからも、頼む」
不意に
静かな寝息を
「まだあのクソ親父には言いたいことが山ほどあるんだ。なのに、これで終わりなんてあんまりだろうが……!せめて最後に一言言ってやらねぇと気が済まねぇ……!」
祈るように、右の手首を触る。そこに結ばれた
血の
信頼と愛情。勇者はそこに自分の目指す一つの理想形を見た。
「なぁに、多少苦しかろうが、あのクソ親父は
娘は、レイ、セラ、そしてユウと順に見た。もうその瞳は自分を見失ってはいない。
父親と同じ、その黄色の眼光に決意を
「……よし、分かった。ユウ、どうすればいいか分かるか」
意外にも、真っ先にそう答えたのは殺すのが一番の救いだと
「正気?あの
それは形だけの否定。優しい魔法師の顔にはすでに苦笑が浮かんでいる。
「正気、じゃないのかもな。そもそも、“勇者特区”を作ってもらうためにエルガス王を説得しにいった時から。ユウに全てを
こんな幼い少女が世界を救うなど。そしてそれを心から信じているなど。これが正気の
けれども確かにレイは、セラは、この少女の行く
ならば、この少女が少しでも可能性があると言うのなら。自分達はその可能性を少女が
「そう……そうね。やれるだけやってみましょう」
そしてセラは、その
「どうすればいいの?勇者様」
「二人共……ありがとう」
気の抜けるような、どんな時であっても
「リンちゃんママが言っとったけど、たぶんうちが
自分の手の平を見つめて考える。かつて二度起きた、
アー……
ユウの足元でさくらもちがぴょんぴょん
「……相手も、うちと同じ事を想ってくれてること、かな」
手を結び合う。
そんな当たり前のこと。
「でも、昨日族長と
その
「それは必要なかったからじゃないか?もともとここの
であるならば、
「なら条件は満たしてるはずや。親父さんは人間と仲良ぉしたいと思ってくれてる。あとはうちが
結論は出た。勇者とその護衛二人は顔を見合わせて
そしてユウはディナに向き直る。
「正直、ほんまにできるかどうかは分からん。でも、やれるだけやってみよか!」
そうして突き出された小さな拳。その
一瞬
「頼んだぜ、勇者!」
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