招かれざる者(2/4)
あたしのせいだ――
ドロドロとした溶岩のような自責の念がディナの心を焼き尽くす。燃え盛る怒りの炎は幼いシェサを人質にとった聖堂騎士へと向けられたものだけでなく、自分自身への怒りでもある。あまりの怒りに視界が白く明滅するほどだった。心の中で燃える炎の熱気を吐き出さんが
「シェサを放せッ!!」
怒り狂うディナだったが、それに負けず劣らず感情を高ぶらせている者がいた。
人間と魔族が手を取り合う未来を誰よりも夢見る者。異世界から来た黒髪の勇者。ユウ。
「子供を盾にするとか、あんたらそれでも大人かッ!」
ユウの叫びには耳を貸さず、シェサを
「黒髪の子供……あのガキがラドカルミアの勇者か。ちょうどいい、機会があれば始末しておけとのお達しだ」
聖堂騎士がギリリとシェサの
「テメェッ!」
飛び出そうとするディナを黒い毛に
「魔族に人質が通用するかどうかは
その瞬間、レイが
だが、テヴォはユウの方には見向きもしなかった。
「断る」
「それじゃあ例え生き残っても、友人を
「友人?友人だと!?魔族が人を友と呼ぶだと!?やはりアムディール様の考えは間違っていなかった!ラドカルミアは魔族と
もはや自分達が誰の
次期教皇の座を狙う
「その子を放してやってくれねぇか。何もせずに森から出てくれりゃあ、俺達は一切手は出さねぇ。ここからもすぐ出ていく。約束する」
そう言いつつ、一歩前へ。
「そ、それ以上近づくなァッ!」
シェサを
説得の通じる状態ではない。
「うちが狙いなんか!?やったらうちが代わりに人質になったるわ!やからシェサを放せッ!」
「よしなさいユウッ!」
自分の身など一切
もといた世界でも、嫌と言うほど見た光景であったから。
「セッちゃん放してッ!シェサを助けんと!」
「
もがいて腕を振り払おうとするユウを必死でセラは
どうすればいい。暴れるユウを押さえつけながら、セラは考えた。そしてふと、前にいるテヴォと目が合った。
「……お互い苦労するな」
その黒い毛に
そしてテヴォは、さらに一歩前へ。
「それ以上近づいてみろ……こいつの命はないぞ!」
立ち止まったテヴォは、シェサのその様子にスッと目を細めるとやおらその場に
「そいつを放してやってくれ。俺はこの集落の族長だ。人質なら俺がなる」
「ば、馬鹿を言え!貴様が人質になど――」
「暴れるのが怖いってぇなら、ここで両腕を斬り落とす。あんたらには無理でも、後ろの勇者の護衛ならすっぱりやってくれる」
確かにレイの
「
そして、両腕を上げて頭を下げる。
いつかどこかで見たような光景にレイは息を飲んだ。かつて聖堂騎士達の場所に、自分はいた。
「そいつはまだ子供だ。これからなんだ。だから頼む。殺さないでくれ」
「親父……」
今まで見たことのない父の一面に、ディナもそれ以上の言葉が出てこない。魔族領から逃げ、
「う……あっ……」
頭を下げられた聖堂騎士は言葉にならない
そのときだった。
――やめなさい
どこからともなく声が響いた。心臓に氷を押し当てられたような
次いで
「
――〈見えざる
ぶぉんという何かが空を
「――え?」
突然
そして背後で何かが倒れる音が十ほど
「う、あ――」
地に転がった首と、目が合った。
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