自然と共に生きる者達(8/8)
セラ達とは少し離れた位置に座るユウ。その姿にちらちらと視線を送る小さな姿があった。
「……………」
ユウが視線の方へ視線を向けると、
ふと思いついたユウはわざと顔を逆の方向へ向ける。
「――!」
今がチャンスとばかりに近づいてくる
「――ぅあ!」
間近で
その子供の手はユウのすぐ側、小さな勇者の
「なんや、さくらもち触りたかったんか」
シェサの関心がどこにあるかを知ったユウは、その感心の向くものを抱え上げ、
「はい!」
目の前に差し出されたスライムとそれを差し出すユウをシェサは
「……………」
しばし
「……ぷるぷる」
両手で
アー
「……スライムが鳴くなんて、知らなかった……」
「さくらもちは特別やさかい。ここら
「うん……すぐに他の獣に食べられちゃうから……」
このゼリー状の物体にロクな栄養があるようには思えないが、少なくとも水分補給にはなるのかもしれない。
「なぁなぁ、名前なんていうの?」
ユウが
「――シェサ」
「シェサちゃんかぁ。うちはユウ。よろしくなぁ」
差し出された白い手を黒い手がおずおずと
白い手が、
「――え?」
ぷるぷる――
「スライムはな、魔力がご飯なんよ。だからこうやっていつもうちがあげてんねん」
さくらもちが嬉しそうに
「ユウは
ユウが魔力を放出したことでそう思ったシェサが
「ディナちゃんが使うやつ?まさかぁ。うちができんのは魔力を出すだけ。魔法も使えんよ。魔法どころか剣も振れんし……」
「でも、勇者なんだ」
この黒髪の少女が勇者であることはすでにテヴォから
「
最初こそ自分自身でも信じられなかった。だが、さくらもちと出会い、
魔族との和解。
そのためにユウはここにいる。
そこでふと、シェサの視線がさくらもちではなく、自身の頭に向いていることにユウは気付いた。顔、ではない。髪、か。
「どしたん?」
首を
「――同じ色だ」
その人間ではとても珍しい黒い髪と、シェサ達
同じ言葉を話し、同じ物を食べ、同じ毛の色をしている。
シェサが今まで知っていた
そして今日出会ったディナ以外の人間三人。最初はディナとはまた違う
とりわけこの自分と同じ毛の色をした少女、
「……ユウ、この森の外がどんななのか、教えて?」
おずおずとそう口にしたシェサ。その視線の先にある火に照らされて朱を帯びた、毛が少なく、
「ええで!あ、でも、うちもまだ分からんこと多いけどな」
そう言ってから語られた人間の世界は、この森で生まれ、この森しか知らないシェサにとってはとても遠い地のことのように思えた。だが実際はそうではない。森を出れはすぐそこにユウの語る世界が四方に広がっている。近いどころか、目と鼻の先だ。すぐ側にある未知の世界の話に一匹、いや一人の
その様子を、彼女の両親
まだ年若い、二人の少女の交流。次なる世代を
閉じられたこの森の中は、その小さな
この
並べられた皿の中身が全て空になるまで
実際に“勇者特区”に移住するかどうかはともかく、この
いざとなれば、この幼い人間の少女に未来を
――
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