自然と共に生きる者達(5/8)
「――なに?」
森の外、すなわち人間の世界。魔族が一度足を
「うちな、人間と魔族は、もっと仲良ぉできると思うねん。今はお
「ほぉん、妙なことをいう
相手が襲ってくるから。どこかで聞いたようなフレーズにレイは不思議な
「うん。だから、怖がらんように皆のことを他の人間に知ってもらう必要がある。やから、“勇者特区”に来てほしいねん」
「なんでぃそりゃ」
その問いにはディナが代わりに答える。
「この勇者が作った、人間と魔族が共に生きれる場所さ。すげぇぞ!もうすでに人間と
「ほぅ、
それがどれほど奇跡的なことか。
「人間と魔族はお互いのことを知らんだけや。お互いを知って、どちらかがまず武器を降ろせば争いは終わるんや。うちは
我が子への愛情。魔族にもそれがあることをあの老
「もっと魔族のことについて人間が知ることができたら……きっと争いはなくなっていく。逆もきっとそう。姿や生き方が違うってのは、恐ろしいことやないって皆が分かれば、きっと世界は変わる。争いは、誰かを傷つけることはアカンことなんやから」
〈世界を救う者〉、勇者。彼女の救う世界は人間のみにあらず。人間と魔族、双方の平和をユウは望んでいる。そんな誰もが一笑に
「なぁ親父、もう限界なんだろ?集落の若いのは
魔族に育てられた少女の言葉に黒髪の勇者が強く
「時間はかかるかもしれんけど、必ずそうしてみせる。やから、その手伝いをしてほしい」
そして彼女は前に出てその
その手をジッと見つめつつ、テヴォは、
「……その“勇者特区”とやらにすでに
「今はうちらと警備の兵士以外は悪いことした人達やけど、いずれは、もっとたくさんの人も……」
「無理矢理魔族と暮らさせてるってわけかい。しかも罪人ときた。俺達魔族は何もしねぇでも罪人と同列ってわけだ。そんな場所に好き好んで行くやつがどこにいる」
「それは……」
差し出された右手が力なく降ろされる。テヴォの言葉がどうしようもなく真実だったからだ。
「親父!」
見かねたディナが割って入る。
「確かに“勇者特区”にいるのは無理矢理連れて来られた罪人だ。だがあたしはこの目で見てきた。罪人でも、
最初はただの好奇心でいい。あるいは
「そうはいうがな」
テヴォはその獣の眼光で真っすぐにユウの黒瞳を
「俺達は魔族領から逃げてきた。支配するのもされるのもごめんだ。俺たちゃあ自然に生きてぇんだ。
実際、そこですでに暮している
「
いい
「てめぇは黙ってろ。俺はその“勇者特区”を作った勇者に
いつの間にか、場に満たされた空気が変わっていた。ここではテヴォに許可されなくては何一つ
「……何かしらの仕事をしてもらうことにはなる。でも、そのお礼は
その言葉に族長ははんっと鼻で笑う。
「礼だぁ?俺たちゃ森がありゃ何もいらねぇんだ。若いやつが森から出たがるのはただの好奇心さ。それが満たされりゃすぐにまた元の生活が恋しくなる。誰かに言われてしたくもねぇことをさせられるなんざ、魔族領にいるのとなんら変わらねぇ。命令してくるのが上位魔族か人間かって違いだけだ。それなら、多少若ぇのには
自由。彼らが望むものがそれなら、おそらくそれは人間領の中にはない。もちろん、“勇者特区”にも。
親父がここまで
ユウはこれに何と言うだろうか。そう思ってディナが勇者の表情を
「――その自由がおっちゃんの求めるもんなら、そんなん“勇者特区”にはあらへんし、これからもないよ。うちが作りたいのはそんな場所やない」
「うちは
「なんだと?」
「おっちゃんの言う自由は、自分達だけが生きていく話やんか。そうやなくて、他の
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