紅髪の異端審問官(3/7)
また新たな旅が始まろうとしていた。
出発地点はラドカルミア王国の王宮、数ヶ月前もここが出発点だった。空もあの時と同じ雲一つない晴天。どこまでも続く
見送る者もまた同じ。しかしあの時とは違って、その顔に浮かんだ感情は悲しみというよりは不満である。
「もっとゆっくりしていけばいいのに……」
そう言って
リンシアの母たるセルフィリアの屋敷に
王宮へと
――この
武王はそう言って
ともかくエルガス王の
「戻ってきたら真っ先に会いにくるから……」
不満げな友人を
「準備ができたならさっさと行こうぜ。早ければ早いほどいい」
言うや
四人、つまりユウと
ガタゴトと車輪を鳴らしつつ、二頭の馬が力強く馬車を引く。
年下の友人の姿が見えなくなるまで馬車から半身を乗り出して手を振っていたユウだが、やがて
そのタイミングを
「しかし、まさかローティス教の教皇自らが魔族を
「そんなにおかしなことか?」
「それは、そうだろう。教皇ともなれば、人間の自然の
レイの
「ま、多くのローティス教の信徒はそう思っているだろうな。けどそれはローティスの教えを正しく理解しちゃいない」
「感謝せよ人の
ローティス教の代表的な教えの
「ローティス教は争いを禁じているわけじゃない。ただし自然の
「魔族との争いは生存競争だろう。戦わなければこちらが殺される」
「そうだな。だから魔族との戦争で
そうでなくてはラドカルミア王国がローティス教を国教になどするはずがない。
「たださ、闘争ってのは
と、ディナが瞳を開いて視線を再び流れゆく王都の町並みへ。
「魔族が侵攻してきた時の最終
ディナの語るそれはラドカルミアが抱えている大きな問題の一つだ。王都の人口過密。それに
「魔族と争っているから、安全のためには仕方ない。だったらよ、そもそも魔族と争わないのが一番だって思わねぇか?そうなれば人間はもっと自然に、のびのびと生きていける。無闇に争わず、様々な生き物が調和し、共存する世界、それこそが教皇が、ローティス教が真に目指すべき世界なんだよ」
「それはそうだが……相手が襲ってくる」
「つまり相手が襲ってこなきゃ、こっちから戦いを
そこまでディナが話したところで、ユウの隣で二人の話に耳を
「
「あまり数が多くない種族だからな。魔族領では
ディナが組んでいた
「……でも、あいつらの存在を隠して保護するのもなかなか
教皇領、大森林保護区。それが一同が現在向かっている場所だった。
ラドカルミア王国に
そこに教皇が魔族を
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