深窓の才妃(3/8)
「ユーーーーウッ!」
王宮の
「リンちゃん!」
リンシア・フォン・ラドカルミア。この国の王、エルガス・フォン・ラドカルミアの一人娘である。
ひとしきり抱き着いた後、リンシアは不満げに口を
「ユウったら全然会いに来てくれないんだもの。私、
「あはは……ごめんなぁ。ちょっといろいろ
“勇者特区”の運営についてのあれこれは
「ところで、リンちゃんのママがうちと話をしたいって言うとるって聞いたんやけど……」
リンシアがこくりと
「そうなの。本当はユウが
まだ見ぬ
「今から向かえばちょうどお昼頃ね。馬車を用意してあるの。さっそく行きましょ!お母様の住んでるお屋敷にはね、大きな
そう言ってユウの手を引いて駆け出す。そこにはもはや一国の王女としての気品は残っていない。ただ友と交流することが嬉しくて仕方ない一人の少女がそこにいる。
「朝から馬車で王都まで帰ってきてんけど、もっかい馬車かぁ……」
少しばかりうんざりした様子で手を引かれるまま駆けだしたユウの後を護衛二人とさくらもちが追う。護衛というよりもはや子守だ。
リンシアに
馬車が動き出してしばし、
「お尻痛い……」
ユウがもぞもぞと下半身を動かしている。王家所有の馬車ということもあって、座席には
「そのスライムの上に座ったら?」
隣に座るリンシアの何気ない一言に、ユウの
「いや、それはそれでバランス
「このスライム、さくらもちって言う名前なの?変な名前」
そう言ってリンシアはさくらもちを指でつんつんと突く。名前は知らずともそのスライム自体はすでに何度も王宮で見かけているので、リンシアはこの魔物に対して
「なぁなぁ、リンちゃんのママってどんな人?」
尻の痛みを
「うーん……お母様は、とっても優しいわ。いつも私のやりたいことをやりなさい、と言ってくれるの。でも、私が何かを
そしてリンシアは話ながら思い出したように、
「あと、私はよく知らないけど、お母様はすごい魔法師なの!危ないからって全然魔法は見せてくれないんだけど……」
「そうなん?」
続くユウの問いかけは座席の向かいに座る魔法師に向けられたもの。
流れゆく王都の町並みにぼーっと視線を向けていたセラは、
「魔法師協会じゃ有名な話よ。その魔法知識はこの国
「ほぇー、そんなすごい人なんか」
ユウが
そこでふとユウは何か思いついたようにぺちりとさくらもちを叩いた。
「そんなすごい人なら、うちの勇者の力について何か知っとんちゃうかな」
その可能性を
「……確かに。だから今になってユウを呼び出したのかも……」
「なんでもいいが、頼むから
そうこうしている内に馬車は王妃の
馬車を降り、まず目に入るのは屋敷の
「なんか……大人な感じやなぁ……」
そんな計算された美しさも
侍女に案内されるがまま、屋敷の中へ。並ぶ
だがそれも一瞬、すぐにそんな感覚は
「――
「どうした?」
そして一同が二階の
「ようこそ。よく来てくれましたね」
夫であるエルガス王は四十の始めだが、妻の彼女はまだ三十になったばかり。娘を
「お母様!」
リンシアが駆け寄った。だがユウと再会した時のように抱き着いたりはしない。母の身体を
「
そういって
「お目にかかれて
「魔法師協会所属の戦術魔法師、セラ・リグンです」
「
「え、あ、はい!」
名前を呼ばれ、なんとなくユウは
決してユウがエルガス王を軽んじているわけではない。当時も今も、相変わらずユウは身分というものに
ありていに言ってしまえば、年上の大人に対する
「ずっと前からお話したかったんだけど、最近は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます