祈り(2/2)
「まったく!けしからんことです!」
枢機卿は肉で丸くなった拳を握りしめ、声を荒げた。
「魔族を殺さずに飼うなど……例え罪人と同じ扱いとはいえ自然とはかけ離れている!魔族とは人間の敵、見つけ
アムディールの
「今すぐにラドカルミアに使者を出し、“勇者特区”はローティスの教えに反すると
「ならぬ」
寡黙な教皇が発したはっきりとした否定に枢機卿は一瞬、面食らったようにわなわなと口を
「な、なぜです!?」
「魔族は、人間が力で押さえつけたとて言う事を聞くようなものではない。なれば、彼らは彼らの意思でその“勇者特区”に
「それが自然に反しているならば、遠からず
たじろいだアムディールだが、まだ反論する
「し、しかし……風の
「二度、同じことを言わせるな」
「そうですか……ならば私からはもう何もいいますまい。失礼します」
その態度に
が、その瞳はさらなる人物の声によってすぐに開かれる。
「――まったく、なんであんなのが枢機卿なのかねぇ。せいぜい商会の
教皇はゆっくりと声のした方へ首を回した。すると、いつからそこにいたのか大聖堂の柱に寄り掛かるように一人の人影がある。
ただ、彼女の着ている祭服は少しばかり特殊であった。基本的な
陽の光が再び差し、彼女を
まだ少女と言っていい年齢だった。短く
少女の呟きに教皇が答えた。彼女の態度を気を害した様子はない。
「我らローティス教も人の
「金にがめついって言えよ」
と、にべもなく少女は肩を
「でもよ、あいつ、多分勝手に動くぜ」
「うむ……」
教皇は
そんな様子の教皇につかつかと歩み寄った少女は、まったく
「そんなことより、だ」
少女が何を要求しているのか
組紐を受け取った少女は食い入るようにそれを
「……間違いない」
「そうか……」
組紐を手の中に、そのまま手を組んで少女は
教皇も黙したまま瞳を閉じ、祈る。
二人の人間が、魔族の死に、祈りを捧げていた。それも
どれほどそうしていたか、祈りを終えた教皇が
「――限界やも知れぬ。あの森は彼らには
「……ああ」
少女は組紐を
「そうなる前に、なんとかしねぇと……」
少女の言葉に教皇が頷く。
「“勇者特区”……今、この時期に勇者が召喚されたのはローティスの
教皇は身体ごと少女に向き直った。
「その役目、お前を
その言葉を聞いて少女は
「
力強いその言葉を聞いて、教皇は一つ頷くと今一度極彩の窓を見上げた。
信者達もいない静かな日に、その目を
いくつもの
そしてそれこそが、ローティス教が真に目指すべき世界の
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