天に吠える狼少女(ウルフガール)
序章
祈り(1/2)
壁一面に
色硝子を透過した陽の光が
そう、ここは聖堂。
とりわけこのニバノス大聖堂は、大陸
感謝せよ人の
ローティス教の教えは、日々の
争わなくてはならないこともあるだろう。しかしそれは生存競争としての闘争であるべきで、私利私欲のために他の生命を
ローティス教の教えは大陸全土へと広まっており、多くの国家がそれを国教として定めている。争いに否定的な
祈りの日となれば大勢の信者で
一人は老人。すっかり白に染まってしまった髪を
もう一方はごくごく普通の下働きといった風の男。教皇の側にあって明らかに緊張した
男の報告を教皇は所々で
「――という、ことでして。その勇者の
また教皇は頷く。
ラドカルミア王国が勇者召喚という
人間の敵、魔族。絶対に分かり合えぬ存在であるはずのそれを
魔族の侵攻から人間領を護る城壁であるラドカルミアが魔族と手を結んだなどとなれば、人間という種族全体を
もっとも、今はまだ
「それと、例の教皇領で
男が
「教皇様のおっしゃった通り、手首にこのような
教皇が無言で手を差し出した。男は魔族が身に着けていた物を神聖なる教皇に触れさせていいものかと
「……………」
しばし教皇がその組紐を
組紐から視線を
「……して、その
突然の問いに一瞬
「あ、え、えー、私が現場に着いた時には
「……そうか」
瞳を閉じてそう呟いた教皇は、男が止める間もなくその組紐を懐にしまいこんでしまった。
「教皇様は、あの
男のその問いは
「教皇様!ここにおられたか!」
大聖堂の入り口から
だが、その
「アムディール
下働きの男が新たに現れた者の名を
というのも、枢機卿の中でもこのアムディールという男はローティス教という宗教組織の
「はぁ、はぁ、探しましたぞ」
息を整えつつ、アムディールは下働きの男に視線を向け、
「あー……では私はこれで」
人払いの
「聞きましたかな?ラドカルミアの“勇者特区”について」
ちょうど今しがた聞いた話に教皇はゆっくりと頷く。
「まったく!けしからんことです!」
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