邂逅、そして(2/6)
また野営を挟み、旅に出て三日目の昼頃。目的地が近づいてきた。
村が近づいてきたために街道で人とすれ違う回数も増えてくる。
「そろそろどうにかしたほうがいいんじゃないか」
街道の先にとうとう村を囲う木の柵が見えてきたので
「というかそいつ、もともとそんな色だったか?」
レイの記憶が確かなら、昨日出会った
だが今ユウの足元に寄り
「なんかな、ごはんあげる度にちょっとづつ色ついてきてん」
ユウが
「やっぱり魔力
食べ物によって生き物の体色が変化するのはままあること。ここまで
「……連れてったらアカン?」
薄桃色の塊越しに上目
「駄目だ」
騎士はきっぱりと断言した。そもそもレイが許す許さないに関わらず、村内に魔物が入ることを村民達が許しはしないだろう。
ユウもその点は理解しているのかそれ以上ダダをこねることはなかった。だがあからさまにシュンとしょげた様子を見てレイは少しばかり心が痛んだ。しかしこればかりはどうしようもない。
「アカンねんて……」
別れを
ぷるぷる――
言葉の意味が分かっているのかいないのか、スライムは
「元気でな……ばいばい……」
消え入りそうな声で別れを告げ、一歩二歩と後ろ歩きで距離をとる。その後をスライムが付いてこようとするが、ユウは苦し気に首を横に振る。
ぷる、ぷるる――
するとスライムはそれ以上付いてこなくなった。
「付いてこないわね……お別れだってちゃんと分かったってこと……?」
たった一日
だがあの薄桃色のスライムは感情があるかどうかは別にしろ実に動物的な反応を多く見せた。今だってそう、ユウの言葉に
もしかしたらスライムにも意思というものが存在するのかもしれない。そんな考えが頭をよぎったセラは一人苦笑した。
「うう……」
歩を進めつつも
「何も泣くことはないだろう……」
きっぱり別れるように言ったのが自分であるがゆえ、少しばかりばつの悪いレイが困ったように頭を
「泣いてへんもん……」
確かに泣いてはいないが、今にも雨が降り出しそうな曇り空を表情に浮かべて、ユウ達はデマリ村の入り口である木製のアーチをくぐった。
デマリ村は王都からほど近いが故に
点々と立ち並ぶ木造の家屋、住民のほとんどは土地を持つ自由農民と彼らの元で働く
「ええところやねぇ……」
田畑を
村に入ってすぐ、見慣れない
紋章を
そんな女達の質問攻めをやんわりとはぐらかしつつ、ユウ達は逃げるように人気の少ない
日が少しづつ
「ここはかなり恵まれている方だ。北へ行くほど、魔族領が近づくほど警備や
記憶を探っているのか、ここではないどこかを見てレイは言った。
この景色を護るためにレイは戦ってきた。そしてそれを
「なんか、この村の人達は……ううん、この世界の人達はちゃんと生きてるって感じがするなぁ……」
ぽつりと漏れたユウの言葉の意味が分からずに、レイは黙ってその先を
「うちのいた世界の人達は皆仕方なく生きてるって感じやったから……豊かではあったやけど、どうにも心に余裕がなくてなぁ。
もしユウの言うことが彼女の思い込みなのではなく本当のことなのだとしたら、彼女はきっと来るべくしてこの世界に来たのだろうレイは思った。
救い、と言ってもいいだろう。このような少女に、こうまで言われる世界なら、きっとそこはこの世界よりも……。
そこまで考えてレイはそれ以上考えるのをやめた。きっとその先はその世界の住人でないと結論づけてはいけない。何より答えを出せるようなものではない。それはそこに住まう者によっていかようにでも
「――どうだ?少しは勇者としての自覚が出てきたか?何か内から力が
ユウはふるふると首を振る。やはりそう都合よくはいかない。
「まぁ、ここに来るまでに成果はあったじゃない。少なくともユウは訓練しだいで魔法が使えるということが分かったわ。三日でそれなら上出来じゃない」
元の世界のことを思い出したのか、少しばかりしんみりした様子のユウの頭をセラが撫でる。
セラの言う通り、まだ旅は始まったばかり。何も
「そうだな。よし、まずは
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