第24話 実はクッキー、サンドじゃなくて……
魔物のフィーバーにガイが一騎当千の働きをするなか、サンテを中心にした反対方向ではクッキーがその凶悪な戦い方を披露していた。
砂塵として空を舞い、魔物を覆い隠して五感を封じた。
意思ある砂塵は超高速で乱回転し、内部に発生させた雷を用い、一撃で魔物達のHPバーを消し飛ばしてみせた。
戦闘が終わると、全員で魔石やドロップアイテムの回収作業。
ラニラも花冠の擬態を解き、一つずつだが魔石を集めた山へと運んでいる。
まるで、ヨチヨチ歩きの子供のお手伝いの様な姿に、全員がほっこりしながら作業を続けつつ見ていた。
道なき山をバゴットに乗り進み、一行は山の六合目辺りへと来ていた。
「洞窟を見つけたら、探検してこそ冒険者だよね」
サンテの鶴の一声で、洞窟探検に目標が変更された。
元々山方向に歩いていただけなので目的地はなく、これを寄り道と言うのかは誰にも分からなかった。
「暗くて見えない……」
サンテの呟きを聞いた瞬間、ガイとラムが行動した。
ガイはバーンシュートを放たずに、掌に内包したままロケットパンチを飛ばし、赤熱させることで洞窟の寒さと暗さに対応した。
が、光の届く範囲は狭く、熱源としてしか役には立たなさそうだ。
ラムは魔法で体内と洞窟の外を繋げ、体外に太陽光を放ち発光してみせた。
闇に慣れ始めた目には強い光だったが、洞窟を全方向照らすには最適だった。
こうしてガイとラムが協力して、洞窟探索は開始された。
「歩きにくいねー、みんなは大丈夫?」
ガイは全身のパーツを分離させて浮かべることで、鎧の胴体部分が最大サイズになり、安定した浮遊徐行をしている。
コスモスとラニラは、横にしたガイの胴鎧の面部分に乗って運ばれている。
他のメンバーはサンテも含めて自分で歩いている。
ただバゴットは体高を1メートルに小型化させていた。
馬のサイズでは、洞窟に潜れなかったのだ。
ただラムが前方を行くので列全体まで注意が及ばすに、サンテはクッキーを見失っていたのだった。
一方その頃、粒子状になって先行するクッキーは、この短時間で最下層にまで到達していた。
体の砂を更に細かくして粒子状に。
そして分岐毎に体を分けて進み、迷路の様な洞窟を網羅したのだ。
そして洞窟の最奥には、伝説に謳われる存在の死霊系の魔物、リッチーだった。
クッキーはラムに残した案内用の体以外の全てを集めると、リッチーに向けて文字通り飛びかかった。
だが相手は伝説の強者、飛来する目標物になんら動揺せずに魔法で爆砕、クッキーは木っ端微塵にされてしまう。
しかしサンドゴーレム改め……パーティクルゴーレムのクッキーは、その粒子の一つでも残っていれば、周囲の魔力を使い復活する。
それにリッチーには消滅させられたのではなく、木っ端微塵にされただけ。
クッキーとしては移動距離が増えただけで、命になんら別状はなかった。
HPバーは、欠片も減ってはいないのだから。
粒子となりリッチーに纏わりついたクッキーは、その再生能力を使い周囲から魔力を集め始めた。
そう、リッチーの魔力をだ。
リッチーは焦った、突如として砂が飛びかかって来て爆砕したと思ったら、直後に自身の魔力が奪われ始めたのだから。
魔法の爆風でも氷付かせても、結界に隠れてみても、魔力の減少は収まらなかった。
むしろ魔法のを使えば使うほど、体に纏わりつく正体不明の粉が増え、魔力の減少が加速していった。
リッチーは生まれて初めて助けを求めた。
それが例え、ちっぽけな人間の少女でしかなくても、手を伸ばさずにはいられなかった。
「今から私達、お友達だね」
こうしてリッチーが救われ、かの大迷宮は世界から姿を消すことになった。
クッキー 無性別
パーティクルゴーレム(現在・砂)
粒子で出来たゴーレムで汎用性が高く、物理、魔法共に効きにくい。
しかし風や気流の発生する炎、絡め取られる水や動けなくなる氷など、弱点も多数存在する。
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