第20話 未熟ゆえの無知と向上心

 夜、あてがわれた寝室で、リン達夜光連星は反省会をしていた。

 相手の為人と実力を見抜く目を身につけよう。

 不足している実力と経験を増やしていこう、と。


「しかしまさか、普通の女の子にしか見えない新人冒険者が、あそこまで出鱈目な召喚能力を持ってるなんてねー」

「しかも上から教えてあげるなんて言っておいて、何をやっても私達が負けてるしね」


 リンとエイミーの言葉に、メリーとマチルダもうんうんと頷いている。

 しかしどれだけ眼力を研いたとしても、見抜けるサンテの実力は変わらない。

 彼女の実力はどこまでいっても、平凡な田舎者の少女でしかないのだ。

 そして発動させていない能力を見抜くことの出来る者など、世界でも一握りいるかどうか。

 彼女達はその事実に気付いておらず、途方もない道のりを知らずに、目標だけ決めて歩き始めるのだった。


 二つの2段ベッドの下段に、2人ずつに分かれて座る夜光連星の4人。

 彼女達は見てしまった。

 そう、野営の理想形を。

 だから考えた、どうすれば自分達もここまで快適な野営を行えるのかと。

 その日は遅くまで、部屋から魔法の明りが消えることはなかった。




 ラムが4本同時に伸ばした体の一部を使い、寝ている夜光連星からシーツを引っ剥がした。

 そして体の上を這い回るコスモスの感触に。


「キャッ!」

「ヒィッ!」


 などの悲鳴をあげて飛び起きる4人。

 ラムに拘束されて大岩の外まで連れ出されると、バゴットが人数分の石の桶を用意して待っていた。

 ラムは4人を解放しながら、桶に水を溜めていく。

 リン達が洗顔している間にラムとバゴットは周囲に散り、不定期偵察を再開した。


 寝室に戻り武具などをを身につけ、荷物を手に肩にしてダイニングへ。

 テーブルには既にサンテが着席しており、朝食をとっていた。


「あっ、サンテちゃん。おはよう」

『おはよう』

「ムッ、ムグムグ……おはようございまっす! ハムっ、ムグムグ」


「ギャギャー」

 紅椿に促されテーブルに着くリン達。

 これまた石製のランチプレートが目の前にの置かれ、石製のフォークが手渡される。


「あっ、ありがと……」


 昨日から見ているとはいえ、人間の敵であり明確に魔物と判明しているゴブリンが、こうも丁寧に給仕をしている姿が、未だに飲み込みきれない4人。


「ギャー?」


 それでも紅椿に食べないのとでも言うかの如く鳴かれ、慌てて料理を口へ運ぶのであった。




「ごちそうさまでした」

『ご馳走様でした』


 サンテより後に来て同時に食べ終わった夜光連星の4人。

 食休みもなく大岩の外へ出ると、バゴットの能力で一泊の宿が大地へと沈んでいった。

 全力で魔力を込めて威力を高めて魔法を放つよりも、精密作業を継続する方が難易度が高い。

 それをこともなくやってのけたバゴットに、マチルダの心は完全敗北した。

 そして。


「いつか私だって、安全な宿くらい作れる魔法師になってみせるんだからー!!」


 朝から、気合い十分な叫びを上げるのだった。

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