第18話 新人冒険者に対する先輩からの教育2
「町から薬草の多く生えている林まで、少し距離があるけど……サンテちゃん、そこまで歩ける?」
「はい、大丈夫です。バゴットさんに乗っていきますから」
『バゴットさん?』
「はい、バゴットさんです。みんなー、出ておいでー!」
バゴットさんが何か分からずに、声を揃えた夜光連星。
直後、サンテの行動にド肝を抜かれる。
突如として何もない空間から、全身金属鎧などが多数現れたからだ。
驚きに硬直している夜光連星のみなに、自分の仲間達を紹介していくサンテ。
「それでこのこが、さっき言ったキリンのバゴットさん」
「キリンなのに、首は短いのね……まあ、いいわ。それじゃみんな、気を取り直して行くわよ」
『了解!』
「はぃ……りょ、了解!」
夜光連星は斥候弓兵のエイミーを先頭にリン、マチルダ、マリーの順で斜め2列になって進み。
サンテと紅椿はバゴットに乗り、空を歩き。
ラムとコスモスは、ガイの鎧を内部に入って地上を行く。
とうとうガイは歩く事を止め、地面を滑るように、わずかに浮いて移動している。
移動時の大きな音がなくなり、サンテの耳に優しくなった。
空を駆ける馬と地面を滑る鎧。
その二つを見て固まっていた夜光連星の4人は、置いていかれることに気付いて慌てて走って追いついたのだった。
「上から目線で大丈夫とか聞いた自分が、すっごく恥ずかしく思えてきた」
「まーまー、そんなこともあるわよ」
「そうよ」
「誰もあんなの、予想出来ないから」
リンは仲間に慰められながら、なれた早足の速度で目的地の林まで歩き続けた。
夜光連星が林に到着してからも、とても悲しい現実が待ち受けていた。
「サンテちゃん。この葉っぱが薬草で、こっちが毒を緩和……少しだけ治す葉っぱよ。どっちもポーションの材料になるから、ギルドでは常に買い取りされてるけど。取りすぎると生えてこなくなるから、パーティーで取ってきてもいい量が決められているの」
「わかりましたー!」
サンテが万歳してマチルダの説明に返事をした直後、二人の真横にドサッと何かが落ちる音がした。
そこには無数に分裂して採取に行っていたラムが戻っており、薬草、毒消し草、果実、魔石などを山のように積む音だった。
「ラ、ラムちゃんは凄いわね。薬草も毒消し草も、ちょうど2パーティー分に収めているし、果実も食べころのものだけね。それにサンテちゃんのお友達が倒した、魔物の魔石まで集めてきたのね……」
かつて、魔石を買い集め他の街のギルドで売り、冒険者の級を金で上げた人物がいた。
実力のないまま中級まで上がったその人物は、当然仕事で失敗続き。
積み重ねのないハリボテに務まるような、優しい仕事は中級にはなかったからだ。
ほどなくして、その人物は冒険者を引退。
金はあるからと、引退後は商人へと転職したらしい。
この事から魔石の販売実績だけでは、冒険者の等級は上がらなくなった。
それでも広大な林から魔物が居なくなるまで狩られたら、その数は昇級への大きな足がかりになるだろう。
「それを、私達に指導のお礼で半分って。どう考えても渡しすぎよ、サンテちゃん」
採取も終わり空を駆けて遊んでいるサンテに、届かぬと知りつつもリンはつぶやいた。
バゴットに乗せてもらえる順番を、ジャンケンで負けて最後になってしまったので、今か今かと待つあいだ、待ち遠しくてジタバタしながらだったが。
「ちょっとマリー、そろそろ変わりなさいよー!!」
一口メモ
バゴット 雄
ゴジラフ → 麒麟
天駆
大地
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