手紙
翔平くんへ
やぁ、元気にしてる?
と、いってもあなたはいつも元気だよね。
今、外では はるながあめ が降っているよ。
あなたがこの手紙を読む頃には、私は転校しているだろうなんてベタな言い方はしたくないけど、きっとそうなっているんだろうな。
まずはあなたに、お礼を言わせて。
あまり人と話したくなかった。
友だちを作りたくなかったの。
転校するときに、辛いでしょう?
それでもあなたは他と違った。
あなたと話せて楽しかった。
私の部屋に来てくれてありがとう。
それだけは伝えておきたかったの。
あなたは最高の友達だよ。
ああ、どうしてこんなことになっちゃったのかな。
どうして私は転校しなければならないのだろう。
本当はもっと友だちをつくって、野球なんかを教えてもらって、夜更かしをして……。
お母さんに頼んでくれないかな?
転校をやめようって。
本当はね、この手紙はあなたに渡すつもりないんだ。
ただの独り言だよ。
ここだけの話、私、独り言は得意なの。
いつも独りだからね。
それでもあなたに会って、少し下手くそになったかもしれない。
こんな独り言は初めて。
ああ、翔平くん、あなたに言わせて。
あなたになら言える。
まだ、私はいつものように外を眺めていたい。
空を見て、花を見て、そうして過ごしていたい。
ああ、でもやっぱりだめ。
私は先に行かなきゃならない。
それだけは変わらないみたいだから。
翔平くん、ありがとう。
どうか、お元気で、さようなら。
6.19 有沢 千夜
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