第248話赤い鴉だってパンが食べたい
「──ぶはっ!」
ガラガラと崩れ、自分の頭の上に降ってくる氷塊を左腕の篭手で弾きながら息を整える……ギリギリだったけど、何とかスタミナが足りた。
キモい奴らと凍らされた時は少し焦ったけど、細剣の周りに《振動衝》で作った小さな隙間を利用して《二連突き》《四連突き》《八連突き》と細かく発動し続ける事でようやく砕く事が出来た。
小さな隙間では十分に振りかぶれないし、ほぼ突くというよりも前後に小さく揺らす感じではあった……けど、連続して同じ場所に当て続けるとダメージが増えていく《継ぎ矢》を発動していて良かったと思う。
「はぁ……はぁ……」
私は何としても名声が……このゲーム運営の目に留まり、そのさらに背後に居る政治家から注目される程の名声が欲しい。
当初はゲームで稼いだ金額と同じ額のリアルマネーが支払われるからと、この『下層民救済プロジェクト』なるものに参加した。
けれど次第に、いつしか私達の知らないところで行われた選考によって私と同じ下層出身の数人が運営の目に留まって上層への居住の許可と正式な戸籍を手に入れたらしいと聞いた。
……定められた期限までにカルマ値がマイナスだと脱落するのではない……特に大した事も成せずにマイナスだと『ただの犯罪者予備軍』として下層に戻されるんだと、そう気付いてからは私が取るべき手段や行動は変わったんだ。
「ユウ、っ……!」
幼馴染みで、五歳下の男の子と一緒に『いつか放射能がない上層に住みたいね』なんて話し合っていた……まぁ、その子はフィーリアという名前で慣れないネカマプレイをした挙句に重要NPCになっちゃったみたいだけど。
だからこそ、あの子はもう上層住みがほぼ確定しているからこそ……今度は私がその権利を勝ち取らなきゃいけない。
生まれ付き家族や親しい相手であろうと他人の顔が認識できず、見る事も覚える事も出来ない私でもトッププレイヤーと呼ばれる人達や、重要NPCを殺していけば注目されるはず。
顔が判別できない私でも、殺し屋として依頼を受けるという形を取れば向こうから……私も知らない有名人の暗殺依頼が来るし、依頼を受ける過程で私の存在も大多数に認知されるはずだと……それに、有名人なんてどんな人物であっても誰かから恨みや妬みは買っているものだから数には困らない。
「お前を殺して、私はさらに名声を得る!」
「……そっちはマリアだよ」
「……」
掲げた細剣を少しズラして隣の人物へと向ける……こっちは炎使いで一つ前に戦った奴だったか。
赤と黒以外の色も認識できない私では服装から判別する事も難しい……かろうじて分かるのは片方は露出が少し多いかな、という事くらいか。
まぁ何にせよ、こいつを殺す事に変わりはない。
「……殺されたくなかったら私を殺せ」
「本当に混沌プレイヤーは極端だよね!」
ユウ(?)が追加で全身タイツのキモイ集団を召喚する……本当にコイツらは邪魔くさい。
「──シっ!」
先ずは何かオットセイの真似をしているらしい者の首を
お仲間が目の前で殺されたにも関わらず、全身タイツの集団は欠片も気にせずに私へと突撃してくるようだ……とても、ウザイ。
『よろしくニキーwww』
『何回も間違えて恥ずかしくないんですか^^』
『PK厨くっさw』
『キッズかな?』
……真面目に聞いても意味はない罵声を完全に無視ながら剣を振るう。
上から掴みかかろうと振り下ろされる手を膝を曲げながら半回転する事で避け、目の前の全身タイツがそのまま腕を伸ばし切ったと同時に曲げたを膝を伸ばし、脇下から抜き出すようにして振るった細剣で首を
そのまま首を失った全身タイツの死体に体当たりをする事で、そのさらに後ろから飛び掛って来る者への盾とし、一人分の重量がぶつかった事によって動きを止めた全身タイツの腕を掴んで引き寄せる。
『害悪プレイやめちくり──かひゅっ!』
《霜焼け》と《低体温症》のバッドステータスによって手元が狂い、細剣の切っ先で喉を掻き切るだけに留まるがそれで良い……悶え苦しむ全身タイツの首から噴き出す血飛沫によって幾人かの目が潰された。
そのまま彼ら……彼ら? が目元を拭うまでの時間を利用し、ド真ん中へと爆薬を投げ込みそのまま反転……爆風を追い風に術者であるユウを目掛けて駆ける。
「《螺旋突き》」
「《世間との壁》!」
また妙なスキルを使う……名前から効果が推測できないのが一番厄介なところだと思うけど、それ以上にそんな変な名前のスキルに自分の技が防がれているという状況が我慢ならない。
それに世間との壁と言うのであれば、戸籍も選挙権もない私の方が分厚い物を持っている。
「《バイキンタッチ》! ……赤鴉に田中菌が移ったぞー!」
「……は?」
「えっと、これから君は僕を十分以内に捕まえないと田中菌の毒によって死にます……よし、説明したからカウントダウンが開始された!」
「……なんだろう、ちょっとキレそう」
でも、なんだろうな……それと同時に少し楽しい気もする。
このユウって子と戦っていると何が起こるか分からなくてドキドキするし、純粋な気持ちで闘争が出来る気がしてしてしまう。
「タッチ!」
「《バーリア》!」
「……タッチ!」
「《タイム》!」
……訂正、やっぱり凄くムカつく。
ユウ自身がちょこまかと動き回って逃げるだけに留まらず、よく分からないスキルでよく分からない挙動をするから本当に追い切れない。
それを何とかしてやっとタッチ出来ても、これたよく分からないスキルで防がれてしまう。
「今度こそ──タッチ!」
「《クソガキ》!」
ユウがまた何か変な名前のスキルを発動すると、眩い光と一緒に鼻水を垂らした子どもがニヤニヤしながら現れる。
『はい今のなーし!』
「……嘘、ちゃんと防がれる前に触れた」
『何時何分何秒地球が何回回った時〜?』
「……は?」
「……答えられないと無かった事にされます」
「……ありなの?」
「……ありなんです」
少しムカついたり、でもやっぱり戦うのが楽しくなったり……ユウと殺り合うのは小さくない感情を私に与えてくれるらしい。
そのどれもが本物で、どれが正しくて偽物なのかとかは無い……けど、一つだけ確かな事が言えるとしたらそれは──
「あ、ちなみに答えられないと小学生の子どもに煽られます」
『ほらやっぱり言えねぇんじゃんか〜! バッカだなぁ〜!』
「……」
──私は
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