第189話第二回公式イベント・collapsing kingdomその20

「……さて、ハンネスさん達と合流しますか」


私的にはもう満足ですし、このままイベントが終わっても良いんですけれど……どうせなら一位とは言いませんから、上位くらいは狙ってみましょうかね?


「次は帝国辺りでしょうか? それとも雑多な小国を纏めて併合? ……どちらが良いでしょうかね?」


流石に大国と二連戦するほど『バーレンス王国』に国力はまだ無いですし、残りの小国を併合する途中で時間切れになりそうですね……確か半数以上の国が滅んだらそこでイベント終了だったはずですし。


「さすが大国と言うべきか、今回の襲撃程度では『エルマーニュ王国』は滅びないみたいですし……うーん」


まぁ、それでも結構な国力は削れたとは思いますけどね……やはりここは堅実に確実に取れる小さなポイント小国辺りを拾いに行くべきですかね。


「……あまり面白味には欠けますが、仕方ありませんね」


ここからはもう消化試合みたいなものでしょう……詰まらないですが、先ほどまで精一杯楽しみましたので良しとしましょう。


「……何か、ハプニングでも起こりませんかね」


▼▼▼▼▼▼▼


「とんだハプニングだぜ畜生ッ!!」


私は今グルグルに簀巻きにされた状態で豪華な台座の上に寝かされ、ヒンヌー教祖と名乗る変態中学生に礼拝をされている……いや何言ってるんだか分からないとは思うけど、私にも分からない。


「ナーイチチ……ナーイチチ……」


「ひぇっ……!」


しかも何か秘境の部族の儀式の時の掛け声みたく失礼な単語を唱えてるし……これをハプニングと言わずとしてなんと言うッ!! お前に私の苦しみが理解できるものかッ!! …………ユウ助けてぇ〜! お願いします〜! 謝るから〜!


「ね、ねぇ? 流石に可哀想になってきたんだけれど、そろそろ捕らえておくにしても普通にしてぁげないかしら?」


「ならぬ……まだ祈りは終わっておらぬ」


「……あ、そう」


どうかそこで諦めないで! どうしてそう直ぐに諦めるのよ?! なんでよ?! この場で唯一の常識人たる貴女しか味方は居ないのよ?! 敵だけれど!!


「貴女もその、あまり発育が良くないばかりに災難だったわね​──」


「​──黙れ小娘! お前に私の不幸が癒せるのか? ブラを新調する同級生が、私に話を振っても胸のせいで顔を見上げられない低身長が私だ! 巨乳にもなれず、人並みにもなりきれぬ、哀れで小さい、慎ましやかな胸だ。お前に私を救えるか!?」


「ご、ごめんなさい……」


安っぽい同情で私の地雷を踏み抜いた女の子にガルルっと吠えてみせる……今の私は巷で有名(※不本意)な『聖母マリアちゃん』ではないッ!! ……『鬼子母神のマリア』であるぞッ!! ガルルッ!!


「……で、でも胸の成長は人それぞれだし」


「……フハハハハ! どうやって大きくすると言うのだ? 私と共に巨乳共と戦うと言うのか?」


「ナーイチチ……ナーイチチ……」


できねぇよなぁ?! お前もそこそこ胸がデケェもんなぁ?! 世にはびこる巨乳共を殲滅し、相対的巨乳になろうとしたら、先ずは貴様から縊り殺してくれようッ!! クケケケケケケッ!!


「いや、ほら……成長期はまだこれからだし……」


「小娘、もうお前にできることは何もない。私は既に十六で成長期は終わった身だ、夜明けと共にここを立ち去れ」


「いや、ここが私達の本拠地……(小声」


えるしってるか、女性の胸の成長期は十五歳を最後に止まるらしいぞ……それ以降はどう頑張っても自分じゃ大きくできないらしい。

思えば数多くの努力をして来た……中二の頃から焦り始め、ユウとの夜更かしゲーム三昧も控え、牛乳とキャベツばかりを摂って、豊胸マッサージだって試した。なのに​──


「​──何の成果も得られませんでしたぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッ!!!!!!!」


「ナーイチチ……ナーイ​──ブフォッ」


「おいコラそこぉ! 他の誰でもない、お前だけは笑ってんじゃねぇぞぉ?!」


「いや失敬」


マリアは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の変態を除かなければならぬと決意した。マリアには異常性癖がわからぬ。マリアは、都内のJKである。薄い本を描き、幼馴染ユウと遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。


「貴様を​──殺すッ!!」


「ナーイチチ……ナーイチチ……」


仏説ぶっせつ摩訶般若まかはんにゃ波羅蜜多心経はらみったしんぎょう​​──」


ユウ! ユウはまだか! 早く私を解放し、この変態と……仏教系少女を一緒に葬ろうぞ! なんなのだ『バーレンス王国』は?! 変人ばかりか?!


「ハァ……マリア様、そう怒ってばかり居ては幼子が怯えてしまいますぞ」


「現在進行形で私を怯えさせてるお前が言ってんじゃねぇぇぇえええ!!!!」


観自在かんじざい菩薩ぼさつ 行深ぎょうじん般若波羅はんにゃはら蜜多時みたじ​──」


なにシレッと、さも私が悪いみたいな雰囲気で言葉を発してんのよ?! 貴方の方がよっぽど怖いし、怯えられるからね?! 私なんにも悪くないからね?!


「だいたい怯える幼子なんて何処に居んのよ?!」


「​──ここに」


「うるせぇぇぇぇえええ!!!!!」


照見しょうけん五蘊皆空ごうんかいくう 度一切どいっさい苦厄くやく​──」


なに『決まった……!』みたいにやり切った感を出してるのよ?! 貴方のどこが幼子なのよ、言ってみなさいよ?! 『​──ここに』……じゃないわよ?!


「​──ママ?」


「私は貴方のママじゃないの?! 分かる?!」


「ふぇ?」


「ええい! 親指をしゃぶるなッ!!」


舍利子しゃりし 色不異空しきふいくう 空不異色くうふいしき​──」


何が『ふぇ?』よ! 『ふぇ?』なんて例え親指をしゃぶって見せたところで大男がやっても可愛くともなんともないのよッ!! ただただ気持ち悪いのよッ!!


色即是空しきそくぜくう 空即是色くうそくぜしき 受想行識じゅそうぎょうしき亦復如是やくぶにょぜ​──」


「貴女もお経に逃げないッ!!」


「……………………ふぇ?」


「……………………赦す」


「ママッ?! なぜ彼女は良いのですッ?!」


「ええい! うるさいうるさい!」


くそう……お願いだからユウ……早く助けに来てください……今ならほっぺにチューしてあげます。……やっぱり嘘です。ほっぺチューは無いけど助けに来てください。切実に。


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